勉強において暗記は避けて通れません。英単語、歴史の年号、数学の公式などなど、覚えるべきことは山のようにあります。しかし、「何度やっても覚えられない」「テスト前に詰め込んでもすぐ忘れる」と悩んでいるお子さんも多いのではないでしょうか?
そこで今回は「なかなか覚えられない人向け」 に、 効果的な暗記法 をご紹介します。ただ闇雲に繰り返すより、脳の仕組みを理解して、 効率よく記憶する方法 を実践しましょう。
1. 記憶のメカニズムを理解する!なぜ覚えられないのか?
人間の記憶は、大きく分けて 短期記憶 と 長期記憶 に分類されます。
短期記憶
短期記憶は、数秒から数分間しか持たない記憶のことで、一時的な情報を保持するための記憶です。たとえば、電話番号を一瞬だけ覚えて、すぐに忘れてしまうようなものが該当します。短期記憶は、意識して繰り返さないとすぐに消えてしまう性質があります。
長期記憶
しっかり定着し、長期間にわたって覚えていられる記憶のことです。試験や受験のような場面で必要なのは、この長期記憶です。長期記憶にするためには、短期記憶の情報を何度も繰り返して思い出し、脳に「これは重要だ」と認識させることが必要になります。
人間の脳は 短期記憶から長期記憶へと変換するプロセス を持っていますが、意識的にその流れを作らないと、せっかく覚えたこともすぐに忘れてしまいます。そのため、暗記を定着させるには 短期記憶を長期記憶に変換する方法を知ることが大切 です。
エビングハウスの忘却曲線
「覚えたはずなのに、すぐ忘れる!」と感じたことはありませんか?ドイツの心理学者エビングハウス が発表した「忘却曲線」によると、以下のような結果が出ています。
20分後 には約42%、1時間後には約56%、1日後には約74%を忘れる。
このデータからも分かるように、ある意味、覚えたことをすぐに忘れるのは当然と言えるかも知れません。つまり、一度覚えただけでは時間が経つにつれてどんどん記憶が薄れていきます。これは脳が「不要な情報を削除する機能」を持っているため、使わない情報はどんどん消えていく仕組みになっているからです。
ただ、適切なタイミングで復習をすれば記憶を定着させることが可能です。特に、 復習のタイミングを工夫する ことで、より効率よく覚えられるようになります。この点を踏まえ、次の項目では 具体的な暗記法 を詳しくご紹介します。
2. 効率的な暗記法!脳を活用して記憶を定着させる
①「分散学習」を活用する
記憶を定着させるために重要なことの1つに復習のタイミングがあります。例えば、先ほどの忘却曲線を踏まえ、適切な間隔を空けながら復習を繰り返すことで、記憶を長期間保持することができます。一例として、おすすめの復習スケジュールは以下のとおりです。
1、勉強した直後(10分以内)に1回目の復習
→ 直後に復習することで、一時的な記憶の定着を強化。
2、1日後に2回目の復習
→ 24時間以内に復習することで、「長期記憶」に移行しやすくなる。
3、3日後に3回目の復習
→ 3日目に復習することで、脳が「重要な情報」と認識しやすくなる。
4、1週間後に4回目の復習
→ 忘れる前に思い出すことで、記憶を強化。
5、1か月後に5回目の復習
→ ここまでくると、ほぼ忘れにくい長期記憶になっている。
このように少しずつ間隔を空けながら復習を繰り返すと、記憶が定着しやすいことが分かっています。ポイントは 「忘れかけた頃に思い出す」 こと。このタイミングで復習を行うことで、記憶がより強固なものになっていきます。
② 音読・書く・視覚化で「五感」を使う
記憶を定着させるには、できるだけ多くの感覚を使うのがポイントです。人間の脳は 感覚が刺激されるほど、記憶が強く残る仕組みになっています。そのため、暗記をするときには視覚・聴覚・触覚を意識的に活用する ことが大切です。
例えば、次のような方法が有効です。
- 音読する→聞くことで記憶に残りやすい
- 書く→体を動かすことで記憶に残りやすい
- イメージする→文字だけでなく、図やイラストを使うと記憶に残りやすい
英単語を覚えるときに 「発音しながら書く」「イラストを描いてみる」 だけでも記憶の定着度が大きく変わります。ただ単に目で読むだけではなく、声に出しながら手を動かすことで、脳に強い印象を残すことができるのです。
さらに、 「ジェスチャーをつけて覚える」 というのも効果的です。たとえば、歴史の出来事を覚えるときに簡単な動作を加える だけで意外と記憶が残りやすくなります。これらの方法を組み合わせて活用すれば、「覚えられない!」という悩みを減らすことができるかも知れません。
3. 具体的な暗記テクニック!すぐに実践できる方法
暗記を定着させるには、適切な方法を取り入れることも重要です。ここでは、今すぐに実践できる具体的な暗記テクニックをご紹介します。参考にしてみてください。
①3回書いて覚える
暗記する場合「書くこと」は非常に効果的です。でも、ただダラダラと書き続けても記憶には残りにくいです。効率的に記憶するためには、例えば以下のステップを意識しましょう。
【1回目は普通に書く】
教科書やノートを見ながら書くことで、まず情報をインプットします。
【2回目は見ずに書く】
記憶を頼りに書くことで、脳が「これは覚えなければならない情報だ」と認識しやすくなります。
【3回目は完全に暗記して書く】
何も見ずに書けるようになったら、本当に記憶に定着した証拠です。
この方法を用いることで、単純な「作業」として書くのではなく、「意識的に記憶するためのプロセス」として書くことができます。
②誰かに説明する
「他人に説明すること」は記憶の定着を助けるとても有効な手段です。自分の中で情報を整理し、相手に分かりやすく伝えようとする過程で、脳はより深くその情報を理解しようとします。
例えば、歴史の年号や出来事を暗記するとき、友達や家族に対して「この出来事の背景はこうで…」と話すだけで、記憶に残りやすくなります。実際に、教育現場でも「ピアティーチング(生徒同士が教え合う学習法)」は効果的な方法として取り入れられています。
また、説明する相手がいない場合でも、「自分で自分に説明する」だけでも十分に効果があります。例えば、
- 鏡の前で話す
- スマホの録音機能を使って説明してみる
- ノートに「説明文」を書いてみる
といった方法を試すのもいいと思います。
③一問一答式でアウトプット
暗記が苦手な人の多くは、「インプットばかりでアウトプットが少ない」傾向にあります。教科書を読むだけ、ノートをまとめるだけでは、記憶にはなかなか定着しません。そこで、一問一答式で自分にクイズを出すことで、記憶を強化することができます。例えば、
- 英単語なら、「日本語→英語」だけでなく「英語→日本語」でも覚える
- 歴史の暗記なら、「年号→出来事」だけでなく「出来事→年号」の逆順でも覚える
- 数学の公式なら、問題を作って自分で解いてみる
こういった「情報を引き出す練習」をすることで、記憶の定着を促す効果が期待できます。
4.「暗記が苦手」を克服する習慣づくり
暗記を定着させるためには、日頃の習慣が大切です。ここでは、記憶力を高めるための習慣について解説します。
①勉強前に軽い運動をする
脳の記憶を司る部分である「海馬」は、運動によって活性化されることが分かっています。特に、軽い運動をすることで脳の血流が良くなり、記憶力が向上すると言われています。おすすめの運動は以下のようなものです。
- 散歩(10分~15分)
- 軽いストレッチ
- 階段の上り下り
- ジャンプやスクワット
これらの運動を勉強前に取り入れることで、脳が活性化し、暗記効率の向上が期待できます。
②睡眠をしっかり取る
記憶は、寝ている間に整理されて定着すると言われています。特に「深い睡眠(ノンレム睡眠)」が重要で、勉強後にしっかり眠ることで覚えたことを忘れにくくなります。
勉強の後、十分な睡眠時間を確保することをおすすめします。さらに、寝る前に軽く復習をすると、より強い記憶の定着が期待できます。
③スマホを遠ざける
勉強中にスマホを触ると、脳が「マルチタスクモード」に入ってしまい、情報が整理されにくくなってしまうかも知れません。特にSNSの通知や動画は、記憶力を妨げる原因にもなりかねません。ですので、
- スマホを別の部屋に置く
- 機内モードにする
- 1時間ごとに「スマホ休憩時間」を決める
といった工夫で、勉強中の集中力を維持しましょう。
5.まとめ
記憶力を上げるには、「ただ繰り返す」のではなく、 脳の仕組みを理解して効率よく暗記することが大切 です。
- 分散学習で復習を繰り返す
- 音読・書く・視覚化で五感を使う
- ストーリーやイメージを活用する
- アウトプットを意識する(説明する・問題を解く)
- 運動や睡眠の習慣を見直す
こういった方法を実践することで、「覚えられない」悩みを解決する糸口が見つかるのではないでしょうか。効率的に暗記できるようになるためにも、少しでも「いいかも」と思える方法があったら、ぜひ今日から試してみてください。
【参考文献】
・記憶力を高める科学 勉強や仕事の効率を上げる理論と実践(SBクリエイティブ・榎本 博明著)
・出口汪のマンガでわかるすごい! 記憶術 本当に頭がよくなる一生モノの勉強法(SBクリエイティブ・出口汪著)
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