周りの友だちは将来の夢を話しているのに、お子さんは「やりたいことがない」と言って悩んでいる…そんな声を保護者として耳にすることもあるのではないでしょうか。特に中学生・高校生になると、進路や将来について考える場面が増え、「将来の夢=進路を決める根拠」に感じられてプレッシャーになる場合もあるかも知れません。
ただ、そもそも“将来の夢が見つからない”ことは珍しいことではありません。焦らせるよりも、お子さんの内なる興味や価値観を引き出す関わりが重要です。では、どうすればお子さんのモチベーションを高め、本当にやりたいことを見つける手助けができるのでしょうか。
今回は、そんなお子さんのモチベーションアップのためのサポート方法を10項目にまとめました。無理に大きな夢を押しつけるのではなく、小さな気づきを積み重ねて、お子さんが自分なりの「やりたいこと」や将来像を描けるように支えていくヒントをご紹介します。
①夢の意味を共有し、具体的でなくても良いと伝える
「将来の夢」と聞くと、多くのお子さんは“具体的で立派な目標を言わなければいけない”と感じてしまいます。でも、夢とは必ずしも明確な職業名である必要はなく、「こんなふうに生きたい」「こんな大人になりたい」といった抽象的な方向性でも十分価値があります。
まずは保護者の方が「夢って、最初から決まっているものじゃないよ」「今は漠然としていても全然大丈夫だよ」と伝えてあげることで、お子さんの心のプレッシャーが和らぎます。また、“夢は変わっていいもの”という視点を共有することで、固定観念に縛られず、自由に自分の興味を探索できるようになります。
夢の意味を広く捉えることで、今はやりたいことがなくても問題はないという安心感が生まれ、「まずは気になることを探してみよう」という前向きな気持ちにつながります。
②お子さんの興味を引き出す質問を増やす
「将来の夢は?」と聞かれると答えにくくても、「最近楽しかったことは?」「好きな授業は?」「誰といる時が落ち着く?」などの質問なら、お子さんは答えやすくなります。興味や価値観は、こうした日常の小さな気づきの積み重ねから見えてくるものです。
保護者の方は“正解を聞き出そう”とするのではなく、“お子さんの内側にある興味のタネを集めよう”という姿勢で話を聞くことが大切ではないでしょうか。答えが曖昧だったとしても、それは「まだ見つけている途中」という大事な過程。お子さんが安心して話せるよう、否定せずに「なるほど」「それもいいね」と反応しながらゆっくり引き出していきましょう。こうした対話の積み重ねが、やりたいことを探すための土台になります。
③体験活動や職業体験など、世界に触れる機会を広げる
お子さんが“やりたいことがない”と感じる背景には、単純に「まだ知らないだけ」というケースが多くあります。学校以外の世界を体験することで、新しい興味が芽生えるきっかけが自然と増えていきます。たとえば、地域の職業体験イベント、科学館・博物館のワークショップ、スポーツ体験、ボランティア活動など、さまざまな場に触れることが効果的です。
特に小中高生の時期は、多様な価値観や体験に出会うことで自己理解が深まり、将来の選択肢が一気に広がります。また、「合わなかった」「つまらなかった」という経験も重要で、それらが“自分に向いていないもの”を知る大切な材料になります。体験の幅を広げることは、お子さんが自分の興味・得意・価値観を知る大切なプロセスなのです。
④「こうなれたら楽しそうだね」と未来のイメージを一緒に描く
将来の夢が思い浮かばないお子さんでも、「どんな毎日だったら楽しそう?」という質問なら想像しやすいことがあります。どんな場所で、どんな人と、どんな気分でいるのが心地よいのか―こうした“未来の情景”は、職業名よりも心理的に受け入れやすいものです。
たとえば、「外で働きたい?室内が落ち着く?」「人と話すのは好き?集中して作業したい?」「時間に余裕のある生活がいい?バリバリ働きたい?」など、具体的な日常イメージを一緒に膨らませます。未来のイメージを描くことは、お子さんが“自分の理想とする生き方”を見つけるための出発点です。
保護者の方が「それいいね」と肯定的に応じることは、お子さんの自己理解とモチベーションを大きく後押しします。
⑤お子さんが大切にしている価値観を言語化する
夢とは価値観の延長線上にあります。お子さんが何を大切に思い、どんなときに安心や喜びを感じ、逆にどんな場面が苦手なのかを知ることは、将来像を描くうえで非常に重要です。保護者の方は、お子さんが日常で見せる小さな反応に注目し、「それって大事にしたいことなんだね」と言葉にしてあげることで価値観の言語化をサポートできます。
たとえば「人の役に立ちたい」「静かな環境が落ち着く」「新しいことを試すのが好き」「失敗するのは嫌だけど努力するのは好き」など、価値観は多様です。お子さんが自分の価値観に気づくと、夢を探す方向性が自然と見えてきます。価値観の把握は、進路選択のミスマッチを防ぐ効果もあり、長期的なモチベーション維持にも役立ちます。
⑥ロールモデルとなる人の生き方や職業を紹介する
周囲に“憧れられる大人像”があると、お子さんのモチベーションは大きく高まります。必ずしも有名人である必要はなく、身近な親戚、学校の先生、地域の大人などでも十分です。「この仕事をしている人ってこんな生き方をしてるんだよ」「こういう働き方もあるんだって」と、お子さんが知らない選択肢を丁寧に見せていくことで、自分の未来を想像しやすくなります。
また、保護者の方がその人のどこに魅力を感じるのかを共有することで、お子さんは“価値観のヒント”を受け取れます。ロールモデルを通じて、「こんなふうになりたい」「こういう生き方もいいな」という“憧れの芽”が自然に育ち、将来を考える動機づけにつながります。
⑦段階的な小さな目標を設定し、達成感を積み重ねる
モチベーションは“達成感の積み重ね”によって育ちます。大きな夢がまだないお子さんにこそ、小さくて具体的な目標設定が効果的です。たとえば「今週は英単語を10個覚える」「1分だけ部屋を片づける」「今日の体育で前より1回多く跳ぶ」など、達成しやすい目標からスタートさせるのがポイントです。
成功体験が増えると「できるかもしれない」という自己効力感が育ち、興味の幅が広がり、「もっと挑戦してみたい」という意欲につながります。保護者の方は“結果だけでなく努力のプロセスを認める”ことも意識してみてください。「やってみたんだね」「続けられているね」という声かけは、お子さんの内発的モチベーションを強く支えます。
⑧保護者自身の夢や過去の経験を共有する
大人の経験談は、お子さんにとって大きな安心材料になります。「親だって最初から夢があったわけではなかった」「迷いながら進んできた」という話は、“夢はゆっくりでいい”という実例として力を持ちます。
また、保護者の方がどんな選択をしてどんな壁を乗り越えてきたのかを話すことで、お子さんは“未来はひとつではない”と理解しやすくなります。完璧な成功談だけでなく、失敗のエピソードや後悔していることなども包み隠さず話すことで、お子さんは「自分も迷っていいんだ」と安心できます。
親子の対話を増やすことは、お子さんが自分の将来について考えるうえでの大きな土台になります。
⑨焦らせず、安心して考えられる環境をつくる
夢や進路は、“焦らされると見つかりにくくなる”という特徴があります。「早く決めなさい」「みんなはもう決めてるよ」などの言葉は、お子さんにプレッシャーを与え、自己肯定感を下げてしまいます。大切なのは、お子さんが自分のペースで選択肢を広げられる環境を整えることです。
たとえば、「いつでも相談していいよ」「わからないままで大丈夫だよ」と伝えておくことで、お子さんは安心して自分の未来について考えられるようになります。また、日常生活のなかで興味が芽生える瞬間を大切にし、無理に結論を急がせないことも重要です。安心できる環境があるからこそ、お子さんは自然と“やりたいこと”を見つけていきます。
⑩結果よりもプロセスを評価して内発的動機づけを育てる
夢が見つかる過程で最も大切なのは、「自分で選び、自分で動いてみたい」という内発的な動機づけだと思います。そのためには、結果だけを評価するのではなく、そこまでのプロセスを丁寧に認める姿勢が必要です。
「結果はどうあれ、よく考えてみたね」「行動してみたことがすごいよ」と声をかけることで、お子さんは“考えることそのものに価値がある”と理解します。また、プロセスの評価は、お子さんの自己肯定感を育て、挑戦への心理的ハードルを下げます。やりたいことがまだ見つからなくても、一歩ずつ前向きに進んでいく気持ちを支えるために、保護者の方の関わり方がとても大きな役割を果たすのではないでしょうか。
最後に
将来の夢がまだ見つからないお子さんに対して、保護者の方ができる最も大切なサポートは「押しつけず、見守り、対話すること」だと思います。夢とは必ずしも具体的な職業や目標である必要はなく、お子さん自身の価値観や興味をもとに少しずつ形を作っていくものです。
親子の対話を通じて、お子さんの中にある“好きなもの”“大切にしたいこと”を言語化し、小さな体験や成功の機会を重ねていくことで、やりたいことが自然に見えてくることがあります。保護者自身が過去の経験や夢を語ることで、お子さんに対して安心感や共感を与えることもできます。
また、お子さんを焦らせず、長い視点で成長を支えることで、自信を育て、将来へのモチベーションを大きく育む土台ができます。大切なのは、完璧な答えをすぐ得ることではなく、親子で一緒に探しながら歩んでいくこと。お子さんが自分だけの夢や生き方を見つけられるよう、温かく見守ってあげてください。
【参考文献】
・「13歳のハローワーク」(村上龍著/幻冬舎)
・「将来の夢がない我が子」に悩む親がすべき6つのこと【メンタルコーチ監修】 – STORY [ストーリィ] オフィシャルサイト
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