ADHDのお子さんにとって、勉強に集中することは簡単ではありません。好きな分野なら取り組める子もいますが、周りの理解は得にくいものです。保護者の方は、お子さんの将来を考えると不安が大きくなることもありますよね。現在の勉強の遅れを心配し、解決策が見つからずお困りになっている方も多いと思います。
しかし、ADHDのお子さんは特性に合った勉強法が分かれば、学力を上げることは不可能ではありません。そのためにはADHDの特徴を丁寧に理解し、適切なサポートを考えることが必要になります。
ADHDのお子さんの特徴
ADHDとは発達障害の特性の1つです。注意欠陥や多動が見られ、日常生活や学習面に支障が出る場合があります。注意欠陥型の特性では、集中力が続きにくく忘れ物も多くなりやすいです。また、多動型の特性もあり、じっとしているのが苦手で机に向かっていられないという特徴があります。この他、お子さんによっては衝動性が見られるケースもあります。思ったことをパッと行動に移すので、周囲と馴染めないなどのリスクも高くなる傾向があります。。
ADHDのお子さんをどう勉強に向き合わせるか
お子さんの特性によって、適した勉強方法は異なります。無理をしていないか、ストレスを抱えていないか、この辺を注視することがとても重要です。
注意不足の子の場合
注意欠陥の特性が見られる場合、目や耳から入った様々な情報が集中力を阻害します。気が散りやすい環境を最大限なくすことが、改善のための第1歩となるでしょう。
他には、複雑な学習も集中力の持続を妨げます。問題がぎっしり書かれてあるテキストの場合も、すぐに飽きるかもしれません。逆に、1問1答をはじめとしたシンプルな教材を使うと、効果が出やすいケースもあります。
多動や衝動性がある場合
多動や衝動は無理に押さえつけようとしても改善しません。さらにイラ立ったり興奮したりするため、悪化するリスクもあります。ストレッチで休憩を挟むなど、勉強時間の中でも適切なメリハリをつけましょう。立ったまま勉強した方が落ち着くなら、スタンディングデスクも有効です。
最適な学習習慣を確立するには
学習スタイルの工夫次第で、勉強の習慣化に1歩ずつ近づけます。お子さんに合ったやり方を探すには、焦らずに見守る必要もあります。
無理をさせない
仮に学習面に遅れがある場合でも、根を詰めさせすぎるのはよくありません。良好なコンディションで勉強ができなければ、何かをはじめても集中は続かないようです。机に向かってはいても、きちんと頭に入れて理解するのは簡単ではありません。
また、できなかったり思うように成績が上がらなかったりしても、叱りつけるのは厳禁です。お子さんのペースで勉強できるよう、環境を整えるのことが先決です。
部屋の整理整頓
集中力が続きにくいお子さんの場合、部屋を片付けるだけでも効果が出ることがあります。テレビのリモコンやマンガなど、部屋の中にはあらゆる物があります。これらを目にするたびに人の集中力は途切れてしまうものです。そのため使わないものは引き出しの中にしまっておきましょう。スマートフォンなどは見ていなくても、考えただけで触りたくなるかもしれません。別の部屋に置いておくなど工夫し、すぐさま手に届かないようにしておくとよいでしょう。
光や音に注意する
学校の窓際の席が眩しすぎるなど、光に過敏な反応を示す子もいます。強すぎる明るさが集中を妨げ、イライラや不安感につながってしまうこともあります。
他にも、聴覚過敏で雑音や騒音が気になってしまう子もいますが、本人にとっての大きなストレスになってしまいます。自宅ではこのような周辺環境に注意してあげると、勉強しやすくなるかもしれません。
また、敏感な感覚が捉えるのは光や音だけではありません。強すぎる匂いや温度なども、ADHDのお子さんにとっては不快感の原因になります。室温を最適に保ち、空気清浄機を置くなど、できる限りの対策をとりましょう。
忘れないようにスケジュールメモを作る
注意欠陥型の子は、何か1つに意識を持っていかれると他のことを忘れてしまいがちです。何時何分から何時何分までこの勉強をするなどと、スケージュールを決めておきましょう。細かく予定を決めてメモしておけば、それに従っていくだけです。メモやリストを作っておいてそれを確認するサイクルができると、習慣改善にもなります。
短いスパンで勉強する
学習予定を作っておくとき、1度の勉強時間は短く設定するように心がけて下さい。15分前後を目安に、お子さんがやりやすい時間を探ると勉強が習慣化しやすくなります。ときには意気込んでもっと頑張りたいと思うかもしれませんが、はじめから長時間の設定をしてしまうと、途中で挫折してしまいがちです。失敗が何度も続くと自己評価も下がるリスクがあるので、自分のペースで学習しましょう。
立ったり歩いたりできるスペースを作る
多動性の傾向があると、じっと机に向かうだけでも苦労する場合があります。そのため家庭での学習では、動き回れる環境を用意しておくのも手です。スタンディングデスクがあると便利ですが、わざわざ買わなくても、工夫次第で環境は変えられます。たとえば机の上に箱やミニテーブルを置けば、お手製のスタンディングデスクが完成です。歩きながらの方が頭に入るなら、小さな単語帳などを用意しておくと勉強が捗ります。
図や絵の多いテキストを使う
文字情報ばかりを見ていても、集中が続かないというデメリットがあります。せっかく勉強する時間を取るなら、図や絵による解説付きの教材を効果的に使いましょう。文字だけだとすぐに飽きてしまう子でも、意欲的に教材を開くかもしれません。本だけではなくアプリや動画など、本人が興味を持てるなら取り入れてみると前進できる可能性が上がると思います。
周囲のサポート
ADHDの特性を持つお子さんには、周りの理解とサポートも必須です。必要な支援を実施し、お子さんの成長を見守ります。
保護者の方によるサポート
ADHDのお子さんは同級生の子に比べ、成績が伸び悩むケースが少なくありません。
多動や忘れ物の多さから先生の評価が下がり、叱られることも場合によってはあるかもしれませんし、周りの子が簡単にできることでも、お子さんには難しい物事もあります。それらの状況が重なると自己肯定感が下がっていき、精神的なデメリットにつながります。保護者の方はお子さんを支えるために、強制ではなく受け入れる姿勢を見せてあげて下さい。安心できる場所を家の中に作っておけば、自尊心が不必要に傷つくのを防ぎやすくなります。
その他、学校との連携も図っておけば、家庭と学校での様子を情報交換できます。担任の先生の理解も必要になる場面は多々あるので、面談などで細かく話しておくと良いでしょう。
また、ADHDの特性が見られる場合には医療機関への早めの受診をお勧めします。専門的な支援があると、お子さん本人や保護者の方の精神的な安心にもなります。外部機関とうまく連携すれば、お子さんのサポートがしやすくなるはずです。
家庭教師の利用
家庭内でのサポートをしていても、勉強面では限界は出てきてしまいます。高学年になるにつれて学習の難易度はどんどん上がっていきますし、家族だと感情的にもなりやすいと思います。教え方にも工夫が必要になるため、家族ではない第三者が指導することも視野に入れてもいいかもしれません。
塾なら1対1の個別で生徒のペースに合わせられるような場所。家庭教師なら自宅で勉強を教わることになるので、環境を整えやすくもなります。学校のように、周りの子の喋り声や明度によって集中力を妨げられることがありません。また、塾では必ず着席しなければなりませんが、家庭教師なら自由度が高いのもメリットかもしれません。
お子さんの特性に合わせて細やかな指導ができるため、学習に集中しやすいでしょう。
まとめ
ADHDのお子さんの特徴と、最適な勉強方法について解説しました。デリケートな部分も多く、生活でも学習でも周囲のサポートが不可欠です。簡単なことばかりではありませんが、少しでも参考にして頂ければ嬉しく思います。
実際問題、家庭内だけで学習サポートを継続するのは難しいこともあります。その際は、専門の機関や塾や家庭教師にサポートをしてもらうことも検討してみるといいと思います。
適切な支援をすれば学力や成績は上げられます。お子さんの様子にも注意しながら、最適なサポートを考えてみましょう。
家庭教師のガンバ 今村 剛