「高校受験まで時間がないのに、全く勉強しない…」
中学3年生のお子さんがいらっしゃる保護者の方は、そんな悩みを抱えているかもしれません。高校受験生の多くは、部活を引退する夏休みまでに受験勉強を開始します。夏になっても勉強する気配がなければ、心配になるのはもっともだと思います。
ただ、周りが焦って勉強を強要しようとしても、お子さんのやる気は引き出せません。逆に反発することも…。どうして勉強しないのか、をしっかり理解して対策をとる必要があります。
そこで今回は、高校受験生を抱える保護者の方に向け、お子さんが勉強から遠ざかる「よくある原因」と、事例ごとの具体的なサポートをお伝えします。効果的な関わり方、接し方が出来るきっかけになれば嬉しく思います。
高校受験生が勉強しない理由とは?6つのよくある原因を解説
受験が差し迫っても一向にやる気が出ないお子さんは、勉強に高い壁を感じていると思います。壁となる要因はお子さんの置かれた状況により異なりますが、大まかに6つに絞られます。
①学習習慣が身についてなく勉強に集中できない
継続的に勉強をしてこなかったお子さんは、簡単には「勉強モード」へ切り替えられないことが多いです。一時的に集中できても、長時間持続するのは難しいのではないでしょうか。机に向かう習慣をつけ、集中力を高めなければなりません。
学習の習慣がない状態では、塾や家庭教師とやってみても効果は出にくいです。結局はお子さん一人の時間が長く、そこでの勉強が大切だからです。「毎日宿題をしっかりやる」「最低限の予習復習を行う」など短時間の勉強から習慣化し、徐々に時間を伸ばすことが必要です。
②何から始めれば良いかわからない
具体的に何を勉強すればいいかわからず、やる気を失ってしまうお子さんもいます。受験勉強は範囲も広く、苦手も避けて通れません。これまで模擬試験を受けてこなかったり、内容をしっかりと復習しなかった場合、自分の苦手を把握できていないこともあり、何から手を付けるべきかわからず、途方に暮れてしまうことさえあります。
③高校受験を自分事として捉えられない
志望校が定まらず、高校受験の話をしても反応が薄いお子さんは、受験を自分事として捉えていないかも知れません。「みんなが行くから高校に行く」「親が言うから〇〇高校に行く」程度のモチベーションでは、頑張って勉強する気になれないのではないでしょうか。
このようなお子さんは、最低限「どの高校に行きたいか」「高校で何をしたいか」を思い描くことから始め、自分の人生を主体的に選ぶ第一歩として、高校受験を捉え直す必要があります。
④受験へのプレッシャーや不安で動けない
高校受験を重く考えすぎ、プレッシャーや不安のため、動けなくなるお子さんもいます。志望校への想いが強すぎたり、周りの期待に応えようと一生懸命になることで、自分で自分を苦しめているのです。模試の結果に泣くほど落ち込んだり、感情的になる場面が多くなったら、精神的に追い詰められている証拠かも知れません。
ストレスが限界に達すると、長期的な問題になりかねません。大事になる前に、お子さんの状態を的確に把握しましょう。
⑤自分なら高校受験は余裕だと思っている
自己肯定感が強く、勉強でも失敗の少ないお子さんの中には「高校受験は余裕だ」と考えている人もいます。もちろん、そのまま志望校に合格する人もいます。ただ、もし実際に志望校合格へ十二分な学力を持っていなかった場合、周囲の学力が徐々に上がるにつれ、現実に気づかされる…となっては遅いかも知れません。
どんなに自信があっても、努力を続けることが大切ではないでしょうか。
⑥部活や人間関係など勉強以外のことで頭がいっぱい
部活や人間関係など他のことで頭がいっぱいのお子さんもいます。特に秋から冬にかけて大会が控えている強豪に所属する場合、部活中心の生活を続けざるを得ません。受験が差し迫っていることを理解しつつも、肉体的・精神的に勉強へ打ち込めないのです。
人間関係のトラブルなど、努力で解決できることは出来るだけ早く解決することが大切です。ただ部活は個人の判断で変えられるものではありません。やらなければならないことが重なる場合、並行する手立てを講じるしかありません。
【事例別】高校受験生が自ら勉強に向かうための親の具体的サポート
お子さんが自ら勉強に向かうようになるには、状況に応じたサポートが必要です。闇雲に机へ向かわせても、勉強を継続できるようにはなりません。前章で挙げた6つの事例に基づき、対処法を実践しましょう。また、サポートの際には「伴走する」ことを心がけてください。高校受験はお子さんが未来を主体的に選ぶ最初の機会です。大切な決定を親が奪ってしまわないよう、十分に留意します。
①一緒に学習計画を立て勉強を習慣づける
学習習慣がなくて集中力が続かない場合、まずは無理のない学習計画が必要です。お子さんと一緒に目標を立て、具体的なプランを作成しましょう。このタイプのお子さんは計画的に勉強した経験が少なく、学習計画の立て方がわからない場合も多いです。以下のステップを踏み、親が主導で意見を書き出すのもいいと思います。
<学習計画を立てるための4STEP>
1)長期目標を立てる。高校受験では「志望校合格」を目標に据えるのが適切です。
2)冬休み前までに実現する中期目標を立てる。志望校合格から逆算し、目標点数や偏差値を設定すると良いです。
3)中期目標を実現するための短期目標を立てる。向こう1ヶ月で成し遂げることを具体的に決めます。
4)短期目標を実現するための具体的な学習計画を立てる。1週間ごとに取り組みを決めます。
長期目標から順に辿ることで、長い目で勉強の意義を捉えられ、今やるべきことも明確になります。学習計画で大切なことは「具体的なこと」です。使用する教材や演習範囲、一日の演習量まで細かく設定します。計画が曖昧だと、何をするべきか分からなくなり、気持ちが切れることがあります。
また、計画は必ず実現可能な内容が理想です。無理があるとその時点で歩みが止まります。少しずつ成功体験を積んでいくことが大切です。
②模試を一緒に分析し苦手や強化ポイントを見つけ出す
取り組む範囲がわからないお子さんは、模試の分析からスタートします。これまで受けた模試から、苦手範囲や強化ポイントを特定しましょう。模試が手元にない場合は、学校の実力テストでも構いません。既習範囲全般から出題されるテストを利用します。お子さんだけに任せるのではなく、親も一緒に分析することで、客観的に苦手を発見できる可能性が上がります。
分析が難しいのは、数学や英語など積み重ねの要素が強い科目です。苦手を生む根本的な原因に立ち返らない限り、しっかり理解できるようにはなりません。場合によっては中1や小学校範囲まで戻るケースもあります。分析が難しいな、と感じたら学校や塾・家庭教師に相談しすることをおすすめします。
模試の活用に関しては、以下の記事も参考になさってください。
【高校受験】模試の伸び悩みをズバリ解決!成績アップの効果的な対策とは
③高校に行く意義を親の経験を交えて話す
高校受験を自分事として捉えられないお子さんには、高校に行く意義を伝えます。説教や叱責だと受け取られないよう、お子さんの目線に立ち、ご自身の体験を交えながら話すと効果的です。親も自分と同じ「悩める中学生」だったのだと分かれば、共感を得られるのではないでしょうか。
内容は「高校に行ったから実現できたこと」や「高校で楽しかったこと」などでいいと思います。「だから高校に行くべき!」というスタンスではなく、「この話はあくまでもお母さん(お父さん)の体験談だから」というスタンスです。決断をお子さんに委ねることで、高校受験を自分事として捉え、自分の気持ちで頑張れるように促すことが大切だと思います。
④傾聴の姿勢でお子さんの感情を受け止める
お子さんが受験へのプレッシャーや不安で動けない場合は、想いをまっすぐ受け止めます。傾聴の姿勢で話を聞くと良いと思います。
傾聴とは相手の考えや想いを理解するために、真剣に耳を傾けることです。お子さんが話している間は、アドバイスはせず、価値の判断も挟まずにただ受け止めることを心がけます。無条件に受け入れることで、お子さんは「親にわかってもらえた充足感」を感じるでしょう。同時に「いつもそばに味方がいること」や、「不安をぶつけられる相手がいる安心感」を感じ、心が楽になります。
話を聞き終え何かアドバイスが可能なら、お子さんの目線で話をしてみてください。たとえば「受からなければ人生が終わる」と強迫観念を抱くお子さんには、「高校受験は通過点に過ぎない」ことを経験から話すと効果的です。身近な人の経験談は、大きな安心材料になります。
受験生のメンタル管理に関しては、以下の記事もご参考になさってください。
高校受験はメンタル管理が重要!不安を招く要因と有効な対処法とは
⑤模試を受け現状を理解してもらう
自分の実力を客観視できないお子さんには、模試を受けることをおすすめします。プライドを傷つけないよう言葉に注意しながら、都道府県単位、または全国単位のテストを受けるようにすすめます。模試を受ければ客観的なデータを得られ、結果によっては入試を軽視できないことを実感するはずです。
思ったような結果が出なかった場合は、実力を客観視でき、お子さんのやる気も上がってくるのではないでしょうか。ただ、模試は伸び悩みが多い点に注意が必要です。絶望感や無力感を抱かぬよう、勉強法の確認も大切になります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
【高校受験】模試の伸び悩みをズバリ解決!成績アップの効果的な対策とは
⑥優先順位をつけ勉強に向き合う手助けをする
部活や人間関係など勉強以外の心配事で頭がいっぱいのお子さんには、現状を整理し、優先順位を付ける手助けをします。長い目で見たとき、今向き合うべきものが受験勉強だと実感できれば、頭を切り替え勉強に対して前向きになれます。部活を最優先に据える時期があっても、勉強するべきときには集中して取り組めるのではないでしょうか。
優先順位を付けるには、頭の中を整理するために紙に書き出すのも効果的だと思います。内容は具体的である必要はありません。自分の頭の中を客観的に見ることで、冷静になり、「今は受験勉強に力を入れるべき」と実感できれば良いのです。
親のサポートを成功させるために不可欠な前提条件
サポートを成功させるには、事前にお子さんとの関係性を円滑にし、勉強に集中する環境を整える必要があります。この手間を惜しむと、反発されてしまうことも考えられます。本章で挙げる2つのポイントを強く意識してみてください。
心配な気持ちを素直に伝え対等に話せる関係をつくる
思春期は親に反発を覚えがちです。サポートを受け入れてもらうには、親子関係を円滑にし話を聞いてもらう態勢をつくらなければなりません。ポイントは、お子さんの目線で素直に心配を伝えることです。
デール・カーネギーの著書『人を動かす』には、「人を説得する12原則」として「人の身になること」や「相手の感情や希望に対して同情を寄せること」の重要性が説かれています。まずはお子さんの立場で徹底的に感情に寄り添う努力が必要です。お子さんの立場に立てば、勉強しない理由も見えてきます。その理由を受け入れ、共感することで、お子さんも親の話に耳を傾けるようになると思います。否定や叱責をしたいのではなく、純粋に心配されていることがわかるからです。
話の端々に自身の失敗体験を混ぜるのもおすすめです。「お母さん(お父さん)は完全な人間ではない」「中学生のときには同じように勉強の悩みを抱えていた」ことが伝わります。お子さんは親をより身近に感じ、好意的にメッセージを受け取るようになるのではないでしょうか。
(参照:D・カーネギー(2023)『人を動かす 改訂文庫版』創元社)
落ち着いて受験勉強に取り組める環境を用意する
学習環境を整えることも大切です。いざ勉強に向かおうとしても、集中できる環境がないとやる気を削がれてしまいます。
勉強に適切な環境は、ご家庭ごとに異なります。お子さんの性格や特性をよく見極めなければなりません。たとえばスマホやゲームに集中を奪われるお子さんの場合、無理に部屋で勉強を続けるよりも、リビングを利用する方がいい場合もあります。
また、人の目が気になるお子さんの場合はリビングでの勉強は向かない場合もあります。その場合は自室で、集中力を奪われてしまうものは片づけ、机に置くのは勉強に集中するための教材などをそろえるといいと思います。「今何に集中するか」を明確にすることで、勉強と向き合いやすくなります。
「ただ子ども部屋を用意しているだけ」「教材を買い揃えただけ」では十分な対策と言えません。受験までモチベーションを維持できるよう、環境を整えることも大切です。
高校受験生をサポートする親が避けるべきNG行動
お子さんが置かれた状況をしっかりと理解し、それに合わせたサポートをしている限り、やる気を削ぐことはありません。ただ、心配のあまり早合点で動いてしまうと、お子さんに反発され、かえって勉強しなくなる恐れがあります。ここでは保護者の方がやってしまいがちな「NG行動」をご紹介します。
お子さんの意思を無視して勉強を強制する
どんなに焦っても、お子さんの意思を無視して勉強させようとするのは無駄になってしまうことが多いです。勉強しない原因を特定しない限り、お子さんが受験にまっすぐ向き合うことは難しく、無理に勉強をやらせても空回りする可能性が高まります。
塾や家庭教師など、勉強せざるを得ない環境を用意しても、「無理やり親に通わされている」という実感があると、前向きには取り組めないことが多いです。お子さんのやる気を引き出すことを得意とする塾でも、最低限勉強する意思がなければ続きません。
まずは勉強しない原因をしっかりと突き止め、解決に努めることが大切です。
身近な他人と比較し責め立てる
身近な他人との比較も厳禁です。特に兄弟や友人など、お子さんがよく知る人物との比較は、自尊心を大きく傷つけます。前を向くどころか、塞ぎ込む原因になることも。他人との比較でやる気を鼓舞できるのは、一部の大人の論理です。それで火が付く中学生は稀だと思います。
ご褒美を与えて勉強に向かわせようとする
目先の報酬を目的にすると、長期的なやる気に繋がりにくいため、高校受験では本人の意思決定こそが重要です。人生の大切な選択を、「ご褒美があるから」で決めるのではなく、お子さんが主体的に勉強し、自分で高校を選び取れる状態をつくらなければなりません。受験における努力のご褒美は「高校合格」と「成功体験」だと思います。
ルールをつくることなくスマホを取り上げる
スマホは双方向のコミュニケーションツールなので、勉強を中断してでも返信やリアクションに気を取られがちです。ただ、だからと言ってお子さんからスマホを取り上げるのはおすすめしません。スマホは子ども同士のコミュニティを保つ役割も果たしているからです。
大切なのは厳格なルールをつくることです。使用する時間を決め、「勉強中は電源を切る」「調べ物には共用のパソコンを使う」などを徹底しましょう。
勉強しない高校受験生に関するよくある質問
最後に、勉強に向き合わないお子さんに関する「よくある質問」にお答えします。少しでも参考にしていただければ嬉しく思います。
高校受験で親が口出ししすぎる線引きは?
進路や学習計画に関わる決定を親が行うのは「やりすぎ」だと思います。親は伴走者の意識を持つことが理想ではないでしょうか。様々な決定まで親が行ってしまうと、お子さんは主体的な選択ができなくなります。高校受験は自ら進路を決定し、主体的に歩む最初の機会です。もどかしく思うことがあっても、我慢してお子さんの決定を待つことも重要だと思います。
高校受験で勉強しないお子さんにイライラが募ったら・・・
お子さんを想うあまり、保護者の方自身が疲れてしまっていることも十分考えられます。いったんお子さんから距離を置き、冷静になることも大切です。
突発的な怒りを抑えるには、「怒りの6秒ルール」を意識すると効果的です。これはアンガーマネジメントで使われる感情調節スキルの一つです。大きな感情が湧いても6秒我慢すれば、波が引いていくと言われています。時間の根拠は定かではないですが、突発的な感情は一時の我慢で収まることは事実だと感じます。イライラをぶつけてしまいそうなときは、物理的に距離を置き気持ちを鎮めることをおすすめします。
イライラが収まったら、冷静に勉強をしない原因の理解に努めます。解決への道筋が掴めれば、怒りよりも鼓舞する気持ちが強くなるはずです。
子どもが勉強しない原因は親にありますか?
多くはお子さん自身に問題(やる気、勉強法などなど)があると思います。ただし、親が口出しをしすぎているために、お子さんが自律的に勉強できず、疲れ果てているケースはあります。
勉強しない原因に向き合うことをせず、親の判断だけでお子さんを動かそうとしても、やる気にはなりません。まずは原因をしっかりと理解し、それに合ったサポートをすることが理想です。お子さんがぶつかる壁を乗り越えるためのサポートであれば、反発を招くことはありません。
まとめ〜高校受験に向けて勉強しない子を動かすために親ができることとは?
高校入試には親の適切な関わりが不可欠です。お子さんが一向に受験勉強に取り組まない場合、原因を理解し、それに合わせた対策を講じなければなりません。勉強から遠ざかる代表的な事例には以下の6つが挙げられます。
<高校受験生が勉強しないよくある理由>
①学習習慣がついていない
②何から始めれば良いかわからない
③高校受験を自分事として捉えられない
④受験へのプレッシャーや不安で動けない
⑤自分なら高校受験は余裕だと思っている
⑥部活や人間関係など他の心配事で頭がいっぱい
大人にとっては「どうしてそんな理由で…」と思うことでも、お子さんは大きな壁を感じています。お子さんの立場に立ち、適切なサポートを行いましょう。
<勉強しない6つの理由への有効なサポート>
①一緒に学習計画を立て勉強を習慣づける
②模試を共に分析し苦手や強化ポイントを見つけ出す
③高校に行く意義を親の経験を交えて話す
④傾聴の姿勢でお子さんの感情を受け止める
⑤模試を受け現状を理解してもらう
⑥優先順位をつけ勉強に向き合う手助けをする
原因に合わせた支援を実践することで、お子さんは前を向き、受験勉強に真剣に取り組むようになります。しっかりとしたコミュニケーションのもと二人三脚で歩んでいけば、大きな喜びと共に受験の困難を乗り越えられるはずです。
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