スマートフォンやタブレットの普及により、SNSはお子さんの日常生活に欠かせない存在となっています。友人とのやり取りや情報収集に便利な一方、誤った使い方や不用意な投稿が、トラブルや危険につながることも少なくありません。
写真の位置情報や不用意な個人情報の公開、他人を傷つける発言、さらには詐欺や不適切な誘いなど、SNS上には多くのリスクが潜んでいます。これらを防ぐためには、単なる「ルール作り」だけでなく、情報の正しさを見極め、適切に発信・受信する力、つまり情報リテラシーを身につけることが不可欠です。
今回は、保護者の方が知っておきたいSNSトラブルの予防策と、お子さんに情報リテラシーを育むための具体的なポイントをご紹介します。
1、写真や動画の位置情報をオフにする
スマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真や動画には、撮影した場所や日時といった位置情報が自動的に記録されることがあります。この情報をオフにせずSNSに投稿すると、自宅や学校、通学路などが特定される危険があります。
特に日常の写真は背景や時系列から生活パターンが推測されやすく、犯罪やストーカー被害のきっかけになることもあります。保護者の方は、お子さんの端末で位置情報設定を確認し、撮影時や投稿前に必ずオフになっているかをチェックする習慣を身につけさせましょう。
また、旅行やイベントの写真は、リアルタイムではなく後日まとめて投稿するなど、時間差をつける工夫も安全性を高めます。
2、個人情報(名前・住所・学校名など)を公開しない
SNS上での個人情報の公開は、想像以上に大きなリスクを伴います。お子さんが何気なく名前や住所、通っている学校、制服姿などを投稿すると、悪意のある第三者に特定される危険があります。特定されれば、ストーカー被害や詐欺、なりすましといった深刻なトラブルに発展する可能性も否定できません。また、友達同士のやり取りでも、何度かの会話や投稿を通じて断片的な情報が揃い、結果的に身元が明らかになってしまうことがあります。
保護者の方は、お子さんに投稿内容や写真、背景に映り込む看板や校章、制服、通学路の風景などにも十分注意するよう伝えましょう。「ちょっとくらいなら大丈夫」という油断が、トラブルの入口になります。安全のためには、個人を特定できる情報は極力ネット上に載せないことを徹底することが大切です。
例えばInstagramでは、学校名をアルファベットの略字で表記したり、2010年生まれを「10」と書いたりするなど、直接的な情報を避ける工夫をしているお子さんも多く見られます。しかし、それでも完全な安全が保証されるわけではありません。特に「鍵付きアカウント」だからと安心して個人情報を載せるのは危険です。鍵があっても、知らない人からのフォローリクエストを承認してしまえば、内部の情報はすぐに外部へ漏れる恐れがあります。
本当に安全を確保するには、顔を知っている人、信頼できる人とだけつながることが基本です。SNSは便利な交流の場ですが、世界中の誰もがアクセスできる場所でもあります。「この情報を見られても本当に大丈夫か?」を常に意識し、慎重な情報管理を習慣にしましょう。
3、本名や顔写真の使用リスクを理解する
本名や顔写真をSNSに載せることは、友人との交流には便利な反面、大きな危険も伴います。顔写真はAIや顔認証技術で検索・解析され、他のサイトや広告に無断利用される可能性があります。また、本名での投稿は検索エンジンに残り、将来の進学や就職活動時に過去の投稿が見られてしまう恐れもあります。
お子さんには「一度ネットに出た情報は完全に消せない」という意識を持ってもらうことが重要です。必要な場合はニックネームやスタンプ加工などで身元を守り、顔がはっきり映らない写真を選ぶなど、安全性を考えた使い方を習慣にするよう伝えましょう。
4、投稿前に「見られて困らない内容か」を確認する
SNSは、友達だけでなく不特定多数の人が閲覧できる場です。一度投稿すると、削除しても他人がスクリーンショットを撮っている可能性があり、完全に消すことはできません。そのため、お子さんには投稿前に「この内容を先生や親、将来の自分が見ても恥ずかしくないか」と自問する習慣をつけさせることも大切です。
感情的になっているときや冗談半分のつもりでも、他人を傷つけたり誤解を招く発言になったりすることがあります。保護者の方は、具体的な事例を交えて「投稿の影響」について話し合い、慎重な判断力を育てるようにしましょう。
5、匿名でも特定される可能性があることを知る
SNSでは匿名での利用が可能ですが、だからといって身元が完全に隠れるわけではありません。過去の投稿内容や写真、使う言葉、投稿時間帯、IPアドレスなどから、本人が特定される事例は少なくありません。
特に、特定班と呼ばれる人たちが情報を集め、短時間で個人を割り出すケースもあります。お子さんには「匿名でも責任は伴う」ということをしっかり理解してもらい、発言や投稿に注意を払うよう指導しましょう。「誰にもバレないから大丈夫」という油断が、思わぬトラブルや炎上を招く可能性があることを伝えることが重要です。
6、怪しいメッセージやリンクは開かない
SNSを使っていると、知らない人からのメッセージや、友人を装ったアカウントから怪しいリンクが送られてくることがあります。これらは詐欺サイトやウイルス感染の入り口である場合が多く、クリックするだけで個人情報が流出する危険があります。
お子さんには、知らない相手からのメッセージや、不自然な文章・絵文字の多用、短縮URLなどの特徴を見抜く力を持たせることが大切です。万が一怪しいリンクを開いてしまった場合は、すぐに保護者や信頼できる大人に相談し、必要に応じてパスワード変更やセキュリティ対策を行うよう指導しましょう。
7、SNS依存を防ぐ時間管理の工夫
SNSは楽しく便利ですが、使い過ぎると学習時間や睡眠時間を削り、生活リズムの乱れや集中力低下を招きます。SNS依存を防ぐためには、利用時間を決める、食事中や就寝前は使わないなどのルール作りが有効です。
お子さんと一緒に1日のスケジュールを見直し、SNSに費やす時間を意識させることも大切です。端末のスクリーンタイム機能やタイマーアプリを活用すると、自分の利用状況を客観的に把握できます。保護者自身もルールを守る姿勢を見せることで、お子さんも自然と意識を高められます。
8、偽情報やデマの見抜き方を学ぶ
SNSでは、真実とは限らない情報が日々拡散されています。お子さんが偽情報を信じたり拡散したりしないためには、情報源を確認する習慣を身につけさせることが重要です。公式発表や複数の信頼できるニュースサイトでの報道を照らし合わせる、発信者の過去の投稿やプロフィールを確認するなど、基本的なチェック方法を教えましょう。
また、「感情をあおる見出し」や「誰かを悪者にする内容」には特に注意が必要です。保護者の方が、一緒にニュースを見ながら情報の正しさを検証する機会を作ると効果的です。
9、他人の写真や文章を無断で使わない
SNS上の写真や文章には、著作権や肖像権が存在します。お子さんが他人の写真や文章を無断で転載したり、加工して投稿したりすると、法律違反やトラブルにつながる可能性があります。たとえインターネット上で自由に見られるものであっても、権利者の許可なく使うことはできません。
お子さんには「ネットにあるもの=自由に使えるものではない」という意識を持ってもらい、引用や共有のルールを理解してもらいましょう。また、友達の写真を投稿する場合も、必ず本人や保護者の方の了承を得ることを徹底させることが大切です。
10、困ったらすぐに大人に相談する習慣
SNSでトラブルや不安なことがあったときに、すぐに信頼できる大人に相談できるかどうかは、お子さんを守る大きなポイントです。被害が小さいうちに対応することで、深刻化を防ぐことができます。保護者の方は「何があっても味方でいる」という姿勢を普段から示し、お子さんが安心して話せる環境を整えることが重要です。
また、学校や地域の相談窓口、警察の相談ダイヤルなど、外部の支援先も一緒に確認しておくと安心です。相談することは弱さではなく、自分を守るための大切な行動であると伝えましょう。
最後に
SNSの世界は、便利さと同時に多くの落とし穴を含んでいます。お子さんが安全に利用するためには、「使い方を制限する」だけでは不十分です。危険な状況を予測し、自分で判断して回避できる力を育てることが大切です。保護者の方が普段からSNSの話題を共有し、気軽に相談できる関係を築くことで、お子さんは安心して問題を打ち明けやすくなります。
また、正しい情報を見極める習慣や、発信時の影響を考える姿勢を育むことは、将来にわたって役立つ力となります。SNSは上手に使えば学びや交流の場にもなります。親子でルールや価値観を話し合いながら、安全で健全な活用方法を身につけていきましょう。
【参考文献】「正しく疑う: 新時代のメディアリテラシー (新時代の教養)」(池上彰監修/Gakken)
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