自閉症スペクトラムの特性があると、周りの人とは違いに気付き、自信をなくしてしまうこともあるようです。会話が苦手になることも多く、中学校に入ると小学生のころ以上に悩みを抱えることも多くなります。勉強面だけではなく、人間関係で行き詰まると不登校に繋がったりと問題が深くなってしまうので、出来るだけ早めのサポートが必要です。

まずは、自閉症スペクトラムとはどんな特性なのかを理解しましょう。

自閉症スペクトラムとは

自閉症スペクトラムは発達障害の1つとされています。特徴としては、周囲とコミュニケーションを取ることが難しく感じたり、興味の強弱や、顕著な好き嫌いの傾向など、いくつかの特徴が見られます。

コミュニケーションが苦手

多くの子どもは、成長するにつれて言葉のキャッチボールをするようになり、相手の気持ちや感情をくみ取り、自分が話すべき時と聞くべき時を判断します。しかし、自閉症スペクトラムの特性があると、こういった会話を苦手としやすい傾向があります。自分だけ一方的に話してしまったり、反対に受け身になりすぎたり、空気を読むのも苦手なことが多く、悪気はないのに相手を怒らせる場合もあるかもしれません。

また、この特性は大人になればなくなるというものではなく、就職が上手くいかずに悩んでいたり、コミュニケーションが苦手なために、仕事に支障をきたす人も少なくはありません。

興味の対象とこだわりの強さ

周りが見えなくなるほど物事に熱中することがありますが、興味の対象となる範囲は限定的です。自分が気になる物事であれば集中力を発揮させますが、それ以外には興味を抱きません。

また、こだわりが強いことも特徴の1つとして挙げられます。そのこだわりの方向性は人によって様々ですで、決まった手順に執着したり、独自のルールを作り上げたりもします。そのほか、場所や状況に関係なく、決まった服しか着ないなどというケースもあります。

自分のペースを乱されることを極端に嫌がるため、多くの面で融通が利かない傾向があり、自分のこだわりに外れた行動が難しく、対人関係にも大きな影響をもたらしてしまいます。

特性の現れ方は人それぞれ

自閉症スペクトラムの特性がある人の中でも、詳細はそれぞれで異なります。また、その傾向があっても自閉症スペクトラムとしては診断されない場合もあります。

障害として診断されるかどうかについては、生活に支障があるかないかが重要で、たとえば自分のルールや強いこだわりにより、学校生活が簡単ではないケースがあります。その一方で、好きな教科に熱中したり優れた記憶力を発揮させたりする人もいます。

どのようなサポートがどの程度必要であるかは、人によるということです。

過度なストレスを感じないよう適切な支援ができれば、過ごしやすい環境を作れると思います。

中学生の自閉症スペクトラム

思春期の時期は多くの親が子どもへの接し方に悩みます。

本人にとってもあらゆる変化が起こり戸惑うことが多い時期なので、自閉症スペクトラムの特性がある場合、より適切な対応が必要です。

環境の変化

小学校と中学校では環境がガラリと変わります。

成績を意識する場面が増えて、嫌でも他人と比べてしまうような場面もあると思います。そのため、勉強の遅れによる劣等感を大きく抱き始めるのもこの時期です。周りの目を気にして苦しんだり、空気を読むのが苦手でマイペースすぎて周囲に馴染めない人もいます。身だしなみや言動などが他の人と違うことも、中学に入るとより一層目立つものです。

そのほか、性別による男女の違いも中学では非常に大きくなります。男子同士のルールや女子同士のルールなど、複雑な面も多いはずなので、異性への接し方なども含め、家庭内で伝えながら学んでいく必要があると思います。学校や医療機関とも連携しながら、社会的に必要な知識を与えなければなりません。

思春期特有の注意点

中学生になると、今までは許されていたことでも急に叱られるようになったりします。

自閉症スペクトラムの特性がある人は、やるべきこと・やってはいけないことの適切な判断が難しいので、教師から叱られる頻度が高くなりがちです。

たとえば、音や光などを過敏に感じ取ることで、集中が乱れやすいことがありますが、それによって「真面目に授業を受けていない」と思われてしまうかもしれません。また、社会的な暗黙の了解などを推し量るのは苦手な場合が多いので、そのせいで「態度が悪い」などと誤解されるケースもあるでしょう。クラスで悪目立ちしてしまうことで、友達ができにくくなる可能性もあります。周りに馴染めないままでいると、仲間はずれにされるリスクが高まるかもしれません。

このような人間関係や勉強への苦手意識は、自己否定を招く原因にもなります。

中学生の頃は、ただでさえ、勉強や運動が得意な子と苦手な子の差がつきやすい時期です。自分のことをダメな人間だと一度思い込んでしまうと、精神状態が悪化して、極度の緊張やうつ傾向など、特性が原因となり他の症状が出ることもありますし、精神的な症状だけではなく、頭痛や腹痛のように身体症状として現れる場合もあります。こういった症状がきっかけとなり、不登校になってしまう子が中にはいるのも事実です。

不登校や引きこもりなどの状態は、その後の社会生活にも大きく影響してきますので、特に思春期のサポートは丁寧に行う必要があります。

子どもへのサポートを考える

自閉症スペクトラムの特性については周囲の理解が欠かせません。

周りに分かってもらえない状況は、本人にも家族にとってもつらいことなので、手助けしたいと考える親御さんも多いと思います。だからと言って、周りと同じ行動を強制したり、急に厳しくしたりするのは良くありません。安心を感じられる環境作りはとても大事なので、家に帰れば家族という味方が待っていることをまずは本人に伝えてあげましょう。そのうえで周りとも馴染めるように、少しずつステップを踏んでいけば良いのです。

また、本人が自分でできることを増やすためのサポートも焦らずに考えましょう。

コミュニケーションが得意でなくても、無理なく練習を積み重ねていくことは可能です。学校の友達との長時間の会話が苦手な場合、通院や診察の機会を利用することもできます。今は、お子さんの症状を報告する時は、親御さんが病院の先生に伝えているかもしれませんが、それを少しずつ本人に伝えさせるようにしていくのも良い練習になるでしょう。

そしてここでも強制するのではなく、可能な範囲でやってみることが大切です。

まとめ

自閉症スペクトラムの解説をいたしましたが、ご理解いただけましたか?

一人だけで悩まず、家族や周りの人、医療機関の支援を受けながら一歩ずつ進みましょう。お子さんへの適切なサポートのため、特性への理解が重要です。中学生くらいになると周囲の環境のほか、身体面や精神面も大きく変化しやすい時期になるので、家庭と学校、医療機関とでできる限り連携しながら、適切に対処していきましょう。

家庭教師のガンバ  今村 剛

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