不登校児童生徒は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されています。

文部科学省による調査(※)が開始された平成3年から、不登校児童生徒数は増加の一途をたどる一方です。

不登校になる原因を大きく分けると、家庭・学校・本人と3つの要因が挙げられます。
しかし、実際にはさまざまな要因があるため、特定することが難しい場合もあるのです。

成長段階によって不登校の原因に違いがあると考えられています。
ここでは、不登校の原因を小学生、中学生、高校生に分けて説明していきます。
(※出典:文部科学省調査
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf)

小学生の不登校の原因は?

平成29年の文部科学省のデータによると、小・中学生の長期欠席者数は約22万人、不登校児童生徒数は約14万人です。
このうち、小学生の長期欠席者数は約7万人、不登校児童数は3万5千人となっています(※)。(※出典:平成 29 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について-文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/__icsFiles/afieldfile/2018/10/25/1410392_1.pdf)

小学校6年間という長い期間の中で、学年ごとに不登校の原因の推移がみられます。

【母子分離不安】
小学校1~2年生までの低学年に多いのが母子分離不安による不登校です。
入学前に保育園に通っていた子どもであれば、親と離れることにある程度慣れています。
しかし、幼稚園に通っていた、もしくは親が常にそばにいた子どもの場合、母親と長時間離れることに強い不安を覚えるのです。
一時的に幼児退行がみられることがありますが、拒絶したり無理に自立させたりするより、欲求に応えることで精神の安定を図ります。

【無気力】
登校の意欲が少なく、なんとなく学校に行かなくなるのが無気力タイプです。
学校を休むことへの罪悪感はほとんどなく、身体的症状や精神的不安はあまりみられません。
親と学校が連携をとりながら、担任や友人に迎えに行かせることで登校の意欲を取り戻させます。

【甘やかされ】
親から甘やかされて育ったために、学校の規則や集団社会などについていくことができず、不登校になる子どももいます。
「自己表現が苦手」「我慢することができない」「生活習慣が乱れている」などの特徴があります。
甘やかされタイプの不登校は、自分で最後まで何かをやり遂げる経験をさせることで、自立意識や自信を高めていく必要があるでしょう。

【人間関係】
高学年になるにつれて増加するのが、人間関係による不登校です。
小学校3~4年生になると少しずつ人間関係が複雑になり、個人の好き嫌いも明確になっていくでしょう。
グループの輪ができる、クラスのリーダー的存在が生まれるなどの背景から、陰口や嫌がらせ、いじめに発展する可能性もあります。
5~6年生になるとさらに複雑化し、解決に時間がかかります。
トラブルの早期解決が鍵を握ります。

【勉強の遅れ】
小学校3年生から教科の数が増え、勉強の内容が高度なものになるため、低学年に比べて学力の差がつきやすいです。
テストの成績などで他の子どもと比較される状況が生まれると、自信を失ったり勉強そのものを嫌ってしまったりします。
得意分野を伸ばす、補習授業を受けるなどで不登校の原因

中学生の不登校の原因は?

文部科学省のデータによると、中学生の長期欠席者数は約14万人、不登校児童数は11万人となっています。
不登校児童生徒の多くを占めるのが中学生ですが、学年によって主な不登校の原因が異なります。

【環境不適合】
中学1年生に多いのが、環境不適合による不登校です。
小学生から新中学1年生になると同時に、学校の規則や勉強内容、部活動など環境に大きな変化が訪れます。
新しい環境に上手くなじめず不登校になる、いじめが急増するなどさまざまな問題が生じるのが「中1ギャップ」です。

中1ギャップにおいての不登校には以下の要因が挙げられます。
・勉強の負担が増加する
・制服や髪形、生活上の規則が厳しくなる
・上級生との上下関係が生まれる

中1ギャップは小学生時代に潜在していた問題から生じる傾向にあります。
そのため、中学生の不登校を防止するためには、本人や家庭問題などに対して小学生からの対応が必要です。

【情緒的混乱】
中学2年生に多いのが情緒的混乱による不登校です。
学業やスポーツなど何かしらに打ち込み、親や教師の評価を得ようとしてきた子どもが、心身ともに疲労することで不登校になることがあります。
「息切れ」タイプと呼ばれることもあり、真面目で感受性が強く、完璧主義な性格の子どもに多くみられます。
中学生になると、定期テストや部活動など、数字や勝ち負けで評価される機会が増えます。
努力しても報われない、思ったように成果が出ない状況から無気力になる場合もあります。
休むことへの罪悪感が強く、本人には登校の意志があるものの、登校時間になると頭痛や腹痛、吐き気などの症状が出るのが特徴です。
回復までに長期間必要とするため、慣らし登校をおこないつつ本人の意思を尊重することが大切です。

【不安やストレス】
中学1年生から不登校が長引いているケースもあれば、3年生になってから新たに不登校の原因が勃発するケースもあります。
中学3年生になると、高校進学に向けて多くの子どもが受験勉強に打ち込みます。
しかし、そのプレッシャーやストレスが不登校に繋がるのです。
また、ようやく中学校生活に慣れてきた頃、高校という新しい環境を意識するようになります。
卒業への不安だけでなく、進路や将来への不安を抱える子どもおり、現実逃避のために不登校になることもあるのです。
こういった場合、自分自身と向き合う時間が必要かもしれません。

高校生の不登校の原因は?

文部科学省のデータによると、高校生の長期欠席者数は約8万人、不登校児童数は5万人となっています。
小学校や中学校とは義務教育ではないという点で大きく異なります。
不登校の原因も、大人に近づく段階であるがゆえのものが大半です。

【人間関係、いじめ】
高校1年生では、新たな環境で新たな人間関係を築いていくことが、これまで以上に難しくなります。
クラスの雰囲気になじめない、気の合う友人が見つからない、いじめが発生するなどの原因から不登校になる子どもが多い傾向にあります。

また、科目が大幅に増えるとともに学習内容の難易度も高くなります。
成績によって周囲との格差が生じることで勉強が嫌いになる、学校が楽しくないと感じるようになるケースもあります。

【進路への不安】
高校1年生の秋ごろに選択科目を決定し、高校2年生になると実際に文系コースもしくは理系コースに進みます。
進路に合わせた選択肢となるため、同時に自分のやりたいことや将来就きたい職業、志望大学などを考え始めるでしょう。
不安や焦り、悩み、上手くいかないストレスなどが起因となり、不登校を招くことがあります。
親や教師からの後押し、さまざまな選択肢の提案などにより、本人が問題を解決できるように導いてあげる必要があります。

まとめ

複数的な要因による不登校の場合、原因を特定することが難しいこともあります。
無理に聞きだそうとするのではなく、まずは子どもの気持ちを理解してあげることが大切です。
不登校から回復するまでの道のりが長いケースも少なくありません。
親が一人で抱え込まず、第三者の協力を得ることも時には必要でしょう。