不登校のお子さんが家庭で学習を進めるためには、学校とは違うやり方が必要です。学校ではクラスメートや先生がいる中で学ぶことができますが、家庭学習では一人で学ぶことになるので、集中力を保つのが難しく感じることもあると思います。そこで、お子さんのペースに合わせた学習方法や、興味を引き出す教材を活用したり、工夫が必要だったりします。また、親御さんや周りの人が適切にサポートすることで、お子さんがストレスを感じずに学び続けることができます。この記事では、家庭での学習を成功させるためのポイントをわかりやすく紹介します。
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無理のない学習スケジュールを作る
家庭学習では、学校の時間割をそのまま守る必要はありません。お子さんの体調や集中できる時間に合わせた、無理のないスケジュールを作ることが大切です。学校に通っている、勉強が苦手な子にも同じことが言えますが、無理をしないことで、勉強への苦手意識を少しずつ減らし、学習を続ける力を育てることができます。
スケジュール作成のポイント
- 短時間に集中して学習する: 学習時間を短めに区切り、集中して取り組む方法が効果的です。例えば、20〜30分学習し、5〜10分休憩を取るといったスタイルがいいでしょう。これにより、お子さんが疲れすぎずに学びを続けることができます。
- 達成しやすい目標を立てる: 1日の目標を簡単で達成しやすいものにしましょう。「今日は算数の問題を3問解く」「英単語を5個覚える」など、小さな目標を立ててクリアすることで、お子さんは達成感を味わい、次も頑張ろうという気持ちが育ちます。
また、無理のないスケジュールを作るためには、お子さんのその日の体調や気分を重視することも大切です。お子さんが少し疲れているようであれば、予定よりも軽い内容にしたり、休養を取る日を設けたりすることも必要です。家庭学習の最大のメリットは、学校のような厳密な時間管理から自由であることですので、その自由を上手に活用して、お子さんのペースで進めることを優先しましょう。
集中しやすい学習環境を作る
不登校で授業の遅れが気になり始め勉強を始めようとしても、今までやっていなかった分、なかなか集中できないというお子さんもいらっしゃると思います。家庭で集中して学習するためには、環境を整えることがとても大切です。家の中に、学習に専念できるスペースを作りましょう。
学習環境の整え方
- 学習専用の場所を作る: 家の中で、お子さんが「ここで勉強する」と決めた専用の場所を作ると、その場所に座ることで「勉強モード」に入りやすくなります。机や椅子を使って、他のことに気を取られないようにしましょう。
- 机の上はシンプルに保つ: 勉強に必要な教科書やノート、筆記用具だけを机に置き、スマートフォンやおもちゃなどの気が散るものは片付けておきます。これによって、お子さんが集中しやすくなります。
学習環境は、静かで集中しやすいことが理想ですが、常に完璧な環境を整えることは難しいかもしれません。例えば、小さい兄弟姉妹がいる家庭では、全く静かな時間を作ることは難しいこともあります。そうした場合には、ヘッドフォンを使って静かな音楽を聴きながら学習するなど、騒音を遮断する工夫を取り入れてみるのも有効です。また、家族全員でお子さんの学習時間を尊重するためのルールを作ると、学習のための集中しやすい環境を整えやすくなります。
興味を引き出して学習意欲を高める
不登校のお子さんにとって、勉強を始めること自体がハードルが高く難しく感じることがあります。その場合は、まずお子さんが好きな科目や興味のある、できることから始めて下さい。
興味を引き出す教材の使い方
- 好きな科目から学習を始める: お子さんが得意な科目や興味を持っている内容から始めることで、勉強に対する抵抗感が減ります。例えば、動物が好きなら理科の動物に関する内容を勉強するなど、好きなことから取り組むと学びやすくなります。
- 視覚的な教材を使う: 動画や図が豊富な教材を使うと、視覚的に理解しやすくなり、興味を引きやすくなります。例えば、歴史の授業に興味がある場合は歴史漫画を読んだり、科学が好きなら実験動画を見たりすることが学習意欲を高める助けになります。
さらに、実際に体験できる活動を取り入れることも、興味を引き出すのに効果的です。例えば、理科の学習であれば、家庭で簡単な実験をしてみる、歴史の学習であれば歴史的な場所を訪れてみるなど、実際の体験を通じて学ぶことで理解が深まり、学ぶことへの興味が強まります。家庭学習だからこそ可能なこうした体験を取り入れることで、主体的に学習に取り組むことができると思います。
親のサポートが大切
不登校生が家庭学習をする上で親御さんのサポートは必要です。ただし、あまり干渉しすぎず、お子さんが自主的に学べるように見守ることが大切です。
サポートのポイント
- 見守りながら手助けする: お子さんが勉強している間、近くで見守りながら、必要なときだけ手助けをするようにしましょう。お子さんが自分で考えて答えを出せるようにすることが大切です。
- 褒めて励ます: お子さんが勉強を終えた後、頑張ったことを褒めてあげましょう。「今日はよく頑張ったね」「この問題を解けてすごいね」といった言葉をかけることで、お子さんの自信がつき、次の学習への意欲が高まります。
親御さんのサポートは、学習を助けるだけでなく、お子さんの心のケアとしても非常に重要だと思います。不登校であることによって孤独感や不安感を感じやすいお子さんに対し、「あなたは一人じゃない」という安心感を与えることが学習意欲にもつながります。勉強に直接関係ないことでも、日常生活の中でお子さんの気持ちをよく聞き、一緒に話し合う時間を設けることで、精神的なサポートができます。
休憩をしっかり取ることの重要性
不登校生に限ったことではありませんが、長時間勉強し続けると集中力が途切れてしまいます。そのため、適度な休憩を取ることが重要ですし、休憩をしっかり取ることで集中力を回復し、次の勉強にスムーズに取り組むことができます。
効果的な休憩方法
- こまめに休憩を取る: 30分〜1時間ごとに5〜10分の休憩を取ると、集中力を保ちやすくなります。休憩中には軽い体操をしたり、少し歩いたりするとリフレッシュできて、再び集中しやすくなります。
- デジタル機器を使わない: 休憩中にスマートフォンやタブレットを使うと、そのまま夢中になってしまい、勉強に戻るのが難しくなることがあります。休憩時間には、なるべくデジタル機器から離れてリラックスする時間を作るようにしましょう。
休憩の時間には、リラックスできる音楽を聴く、外に出て新鮮な空気を吸うなど、心身のリフレッシュに努めると効果的です。また、休憩時間をうまく使って好きなことを少しだけ楽しむことで、次の学習への気持ちの切り替えがスムーズになります。例えば、好きな本を数ページ読む、簡単な手芸をするなど、軽い趣味に触れることもリフレッシュになります。
進捗を記録して達成感を味わう
不登校生の場合、特に学校の授業を受けていないので、自分自身の現在地がよくわからないと思います。ですから、家庭学習では、自分がどれだけ進んだかを記録して進捗を確認できるようにしたほうがいいと思います。お子さんが自分の頑張りを目に見える形で確認でき、達成感を感じやすくなります。
進捗の記録方法
- 学習内容をメモする: 毎日どのようなことを勉強したかをメモに残しましょう。「今日は国語の教科書を5ページ読んだ」など、簡単に記録することで、自分がどれだけ頑張ったかを確認することができます。
- チェックリストを作る: 学習する項目をリストにして、達成するごとにチェックを入れると、目標が達成されるたびに達成感を感じられます。これにより、次も頑張ろうという気持ちが育まれます。
また、進捗を目に見える形で示すことは、お子さんに自信をつけるためにも非常に効果的だと思います。カレンダーに勉強した日をマークしてみたり、達成した課題を貼り出すボードを作ったりすることで、自分の努力の積み重ねが視覚的に確認できるようになります。このような取り組みは、お子さんに「自分はこんなに頑張っているんだ」という自信を持たせ、次へのモチベーションにつながります。
楽しく続けられる工夫をする
どんなお子さんでもそうだと思いますが、家庭学習を長く続けるためには、学習そのものが楽しいと感じられることが理想です。そのために、ゲーム感覚で学習を進めたり、小さなご褒美を用意するなど、学習が楽しみになる工夫を取り入れてはどうでしょうか?
ご褒美の設定
- 小さな達成にご褒美を与える: 「1週間、毎日20分勉強したら好きなお菓子を食べる」など、小さなご褒美を設定すると、学習に対するやる気が高まります。ご褒美は無理のない範囲で行い、学習の習慣化を目指します。
- ゲーム感覚で学習する: 学習アプリやクイズ形式の教材を使うことで、楽しみながら学習ができます。楽しみながら学べることで、お子さんの学習に対する抵抗感が減り、自然と取り組む時間が増えます。
また、ご褒美を与える際には、単に物を与えるだけでなく、親子の特別な時間を設けることも効果的です。例えば、「勉強を頑張ったから一緒に好きな公園に行こう」「今日は特別に一緒にクッキーを作ろう」など、親子で楽しめる体験をご褒美にすることで、学習そのものが楽しい記憶として残りやすくなります。不登校生にとってこうした取り組みは、学習面だけではなく親子関係などでもポジティブなことですし、前向きな気持ちを作ることができると思います。
まとめ
不登校のお子さんが家庭で学習を進めるには、無理のないペースで、自分のペースに合わせた学習方法が重要です。家庭学習では、学校と同じように長時間集中するのは難しいため、短時間集中して休憩をしっかり取りながら進めましょう。また、学習環境を整え、親御さんが適度にサポートすることで、お子さんはより安心して学ぶことができます。
お子さんが学ぶことを少しでも楽しいと感じられるように、興味のあることから学習を始めたり、楽しみながら学べる工夫を取り入れることも大切です。小さな達成を積み重ねていくことで、お子さんは自信を持ち、学び続ける力を身につけていくことができるでしょう。親子で一緒に、お子さんが学ぶ楽しさを見つけられるように支援してあげて下さい。また、それが状況的に難しい場合は、家庭教師や他人の手を借りるのも方法だと思います。
家庭学習は時に孤独を感じることもありますが、適切なサポートと工夫で、お子さんにとって有意義で充実した時間にすることができます。焦らず、お子さんのペースで、一歩一歩進んでいきましょう。
参考文献
- 文部科学省 (2020). 学校外での学習支援の重要性. 文部科学省教育研究所.
- 日本教育学会 (2019). 学習モチベーション向上のためのアプローチ. 教育学会報.
- 厚生労働省 (2018). 子どもの健康と学習環境. 厚生労働省健康指導局.
- 日本家庭教育学会 (2021). 家庭での学習支援と親の役割. 家庭教育学会紀要.
- 日本心理学会 (2019). 子どもの学習意欲と心理的サポート. 心理学会年報.
- 文部科学省 (2021). 不登校児童生徒に対する支援施策. 文部科学省教育白書.
- 日本学校保健会 (2017). 休憩と学習の効果に関する調査報告. 日本学校保健会報.
家庭教師のガンバ 今村 剛