高校進学率はとても高く、ほとんどのお子さんが中学3年生で受験します。保護者の方もお子さんの目標を応援したい気持ちが強いと思います。

ただ、現実的な問題として、学校に行くには大きな経済的負担がかかってしまい教育費が家計を圧迫し、やりくりが大変なことも…。

そこで2014年から始まった「高等学校等就学支援金」について触れたいと思います。

2020年に制度は改正され、実質無料となる世帯も拡大しました。受給要件や支給額などを把握し、制度をうまく活用できればメリットも大きいと思います。

高校の学費はいくらかかるのか

ご存知のように公立と私立のどちらに進むかで高校生に必要な費用は全く違います。

平成30年度の文科省の調査では、私立高校の教育費は公立の2倍以上です。学校教育以外に塾などの費用も含めた平均値を見ると、公立高校で年間約46万円、それが私立高校では、年間平均が約97万円となっています。

でも、これはあくまで3年間の平均値です。入学金の支払いもある1年目は、2年目以降の教育費に比べて負担割合が大きくなります。

また、これらのうち公立の授業料単体は年間で11万8,800円、私立の場合は高校にもよりますが、年間平均で40万円から50万円くらいになります。

高校の学費支援制度

教育費にかかる経済的負担を軽減するため、授業料に充当できる支援金制度があります。

家庭の事情などで学費の工面が難しいお子さんでも平等な教育機会を得るための制度で、「高等学校等就学支援金制度」と言います。資金は国が負担しています。

このほかに各都道府県が独自に実施している助成金などもあります。ただ、都道府県によって要件などの詳細は異なります。

年収が低い世帯のための学費無料制度や、所得上限を設定している支援など様々で、生活保護受給者や非課税世帯向けの奨学給付金制度のように、支援制度は多様にあります。高等学校等就学支援金ではカバーできない授業料以外の教育費に使えるのも特徴です。

必要があれば居住地域の支援制度を事前に調べておくと良いと思います。

高等学校等就学支援金とは

2020年の改正によって、授業料が実質無料となる世帯枠が広がりました。高校無償化としても知られている制度です。

制度の仕組み

高等学校等就学支援金は授業料の全部、あるいは一部の支払いを支援するための制度で、奨学金とは違い返還不要で平等な教育機会の一助となっています。家庭の経済的事情で進学を諦めるお子さんを減らすためにも有効です。

この制度を使うと授業料が無料になるか、それに近い負担軽減を得られます。対象となる費用は授業料のみで、入学金や修学旅行費などは含まれません。

また、支援金を受給するためにはいくつかの要件を満たす必要があるため、対象世帯かどうかをまずは確認しなければなりません。

支援金制度の対象者

対象となるのは日本に住所があるお子さんです。公立・私立は問われず、全日制はもちろんですが、定時制や通信制なども含まれます。

受給資格の有無を左右するのは、保護者の所得に関わるところが大きく、判断基準は「保護者の市町村税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除額」となります。これが対象者となるための正確な計算式です。この式に当てはめた結果、30万4,200円未満になれば支援金対象者となります。

基本的な年収の目安は910万円未満の世帯です。公立高校、私立高校ともに年額11万8,800円の支給を得られ、公立の年間授業料が約11万8,800円なので、公立なら無料となるのです。

一方で私立の授業料は公立に比べて高いため、この支給額だと自己負担額が大きくなってしまいます。

そこで私立高校の生徒であり、世帯年収590万円未満の場合には支給額を引き上げました。年間で支給上限36万9,000円まで受け取れます。

ただし所得など世帯状況については様々なパターンがあります。共働きなのか、片一方のみの所得なのか、子どもが何人で何歳なのかなどです。

両親の離婚や祖父母との同居などあらゆる家庭環境があり得るため、学校とも事前に相談しながら、受給の可否をしっかり把握しておく必要があると思います。

なお、通信制の支給方法については年間額ではなく単位制です。世帯年収910万円未満や、590万円未満といった所得の基本的要件は変わりません。

年収910万円未満で公立の場合、1単位につき336円支給されます。私立は910万円未満なら1単位最大4,812円です。私立で590万円未満の年収だと1単位最大12,030円の支給額となります。

給付までの流れ

支援金の交付は国が行いますが、申請書などを提出する先は学校です。

申請書と保護者の課税証明を受け取った学校は、必要書類を都道府県へ提出、その後、国が都道府県に支援金としての費用を交付するという流れです。

国から交付された支援金を都道府県が学校に支給し、学校はその分を授業料に充当します。ですので、この制度は国や都道府県から各家庭が直接支援金を渡されるのではありません。

就学支援金を実際に受け取るのは学校なので、用途は授業料のみに限られています。

就学支援金の注意点

申請が無事に通った場合、就学支援金から授業料が支払われます。

ただしここで注意が必要な点は、申請は入学後に行うことです。入学金は入学する前に支払わなければなりません。

また、高校によっては授業料の事前入金を求められる場合もあります。審査に通れば授業料は返金という形で戻ってきますが、ひとまずは自費での支払いになります。

申請してから返金までの期間も短くはありません。授業料分が戻るとはいえ時間がかかるため、ある程度の備えは必要になります。

就学支援金制度と税額控除制度

教育機会の均衡化に役立つ支援金制度ですが、一方で不公平などという意見もあります。

910万円や590万円の世帯年収は給付要件のボーダーラインとなります。年収が590万円を超えるデメリットは、私立の場合の自己負担額増加です。910万円を超えるデメリットは、支援金自体受け取れなくなることです。

ボーダーをギリギリ超えただけでも、受給資格から外れたりもらえる額が減ったりします。大幅に超えているならまだしも、不公平感を抱いてしまうのも無理はないかも知れません。

そのため対策方法の1つとしては、所得控除の活用があります。個人年金や住宅ローンのほか生命保険の保険料控除など、利用できる控除は様々です。

控除制度をうまく利用すれば、支援金制度のメリットを高められる可能性があります。

まとめ

高校入学後にかかる費用と負担を減らすための支援金制度について解説してみました。少し複雑な部分もありますが、ご参考にしていただけましたでしょうか。

世帯構成や収入状況などによっても支援制度の適用は変わります。まずは学校にも相談し、受給可否の確認が必要だと思います。

もし支援金だけで補いきれない場合には、都道府県独自の助成金も確認してみてください。

家庭教師のガンバ 代表 今村 剛

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