「行動の切り替えが苦手で困っている」そんなお子さんに対しては、家庭でできる行動の切り替えトレーニングが役立つことがあります。
トレーニングには、専門的な知識がなくても大丈夫です。日々の生活の中で少し意識して声かけをしたり、練習の機会を作ったりするだけでも、お子さんの様子が変わってくることがあります。
そこで今回は、家庭で取り組める行動の切り替えトレーニングについて、わかりやすくご紹介します。3つの段階にわけて進めることで、無理なく取り組める方法です。
「うちの子、このままで大丈夫だろうか…」と焦る必要はありません。たとえゆっくりでも、トレーニングを続けていけば、お子さんが自分で行動を切り替えられる日がきっと訪れます。その日まで、保護者の方がそっと背中を押してあげてください。
行動の切り替えが苦手なお子さんの特徴
行動の切り替えが苦手なお子さんには、いくつか共通して見られる特徴があります。
・遊びをやめられず、次の行動に移れない
・声をかけてもすぐに動けない
・予定の変更に強く抵抗する
・好きなことに集中すると周囲が見えなくなる
もちろん、すべてのお子さんに当てはまるわけではありませんが、保護者の方の困り事として、私たちもよく耳にする言葉です。
これらの多くは、本人の性格だけが原因ではありません。行動を切り替えるためには、状況を理解し、気持ちを整え、次の行動に意識を向ける必要があります。お子さんにとっては意外と多くの力を使うことなのです。だからこそ、家庭でできる行動の切り替えトレーニングを行うことで、無理なく力を育てていくことが大切です。
行動の切り替えが苦手なお子さんによくある原因
小学生・中学生の時期は、自分で見通しを立てて行動することがまだ得意ではありません。背景には、以下の要因が影響している可能性があります。
・脳が成長途中で、言われた内容を頭に留めておけない
・時間の感覚が未熟
・経験が少なく、物事の優先順位をつけるのが難しい
こうした要因が重なることで先の見通しが立ちにくくなり、結果として行動の切り替えがうまくできなくなってしまいます。
なお年齢に応じた要因については、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方はあわせてご覧ください。
関連記事:『行動の切り替えが苦手なのはなぜ?小学生・中学生に多い理由と思春期の対応法』
行動の切り替えは家庭のトレーニングで改善できる?
行動の切り替えには脳の特性が関係していることも多く、言葉で注意するだけではうまく響かないケースもあります。そこで取り入れたいのが、家庭でできる行動の切り替えトレーニングです。まずは、なぜ家庭でのトレーニングが有効なのか、その理由を見ていきましょう。
行動の切り替えは習慣で伸ばせる
行動の切り替えが苦手になってしまう背景には、脳の特性やお子さんの発達段階が関係しています。「やらなければならない」と頭ではわかっていても、すぐに取り組めないことは決して珍しくありません。
だからこそ、言葉で注意するよりも生活環境を整えることが大切です。たとえば、
・あらかじめ予定を示して見通しを立てる
・タイマーを使って残り時間を知らせる
といった工夫を取り入れ、それに慣れていくことで、行動の切り替えが少しずつスムーズになっていきます。
家庭では生活のルーティンを作りやすい
家庭は「いつ」「何をするか」を決めやすく、生活のルーティンを作りやすい環境です。一度ルーティンができると、そこで切り替えることが自然な流れになっていきます。たとえば、
「5時になったら宿題」
「6時になったらお風呂」
といった形で習慣にしていくと、そのタイミングに合わせて行動を切り替える力が少しずつ身につきやすくなります。
親がサポートできる家庭こそ最適な環境
行動の切り替えトレーニングでは、保護者の方が環境を整え、その環境に慣れていけるようサポートしていくことが大切です。すぐに声をかけたり、必要に応じて手助けしたりできる家庭の環境は、トレーニングを進めるうえで大きな強みになります。
また、「できたね」「頑張ったね」とすぐに認めてもらえることで、お子さんは自信を持ち、次の行動にも前向きに取り組めるようになります。こうした理由から、トレーニングは家庭の中で取り組むのがとても効果的なのです。
行動の切り替えトレーニングは3ステップで進めよう
行動の切り替えトレーニングは、次の3つのステップで少しずつ進めていきます。
STEP1. 行動の切り替えに慣れる
STEP2. 切り替えをスムーズにする
STEP3. 自分で切り替えられるようになる
トレーニングを段階的に進めていくのは、お子さんに成功体験を積み重ねてもらうためです。小さな変化を受け止め、認めていくことで、お子さんは少しずつ自信をつけていきます。
ただし、すべてのお子さんが「自分で完璧に切り替えられること」をゴールにする必要はありません。お子さんの様子や反応をよく見ながら、無理のないペースで進めていきましょう。
STEP1. 行動の切り替えに慣れるトレーニング
まずは、お子さんが行動の切り替えそのものに慣れることから始めます。トレーニングのはじめの段階では、次の流れで進めていきます。
① 視覚化や予告などで、お子さんに伝える条件を工夫する
② 簡単な切り替えから徐々に慣らしていく
③ 切り替えができたら努力を認める
この流れは、療育の現場でもよく取り入れられている方法です。まずは少しずつ、行動の切り替えへの抵抗を減らしていきましょう。
視覚や聴覚に働きかけて理解しやすくする
お子さんに切り替えのタイミングを伝えるときは、視覚や聴覚を使って伝える工夫をしてみましょう。おすすめなのは、残り時間が表示されるタイマーやホワイトボードです。
タイマーを使って切り替えの時間をセットしておくと、減っていく時間を見ながら「もうすぐ終わり」という感覚をつかみやすくなります。最初のうちは、アラームを鳴らす設定にしておくとよりわかりやすいでしょう。
また、ホワイトボードにはその日の流れを書いておきます。「今日すること」がひと目でわかるようにしておくと、先の予定をイメージしやすくなります。小さなお子さんには、イラストを交えても良いと思います。
さらに、保護者の方からの言葉での予告も大切です。「あと5分で終わりにしてね」「時計の針が12のところに来たら終わりだよ」といったように、できるだけ具体的に伝えることで、お子さんも切り替えのタイミングを理解しやすくなります。
簡単な切り替えから始める
行動の切り替えトレーニングでは、成功体験を積み重ねることがとても大切です。そのため、最初から勉強への切り替えを求めるのはあまりおすすめできません。
まずは、少し頑張ればできる程度の簡単な切り替えから始めてみましょう。たとえば、「遊びをやめておやつの時間にする」といった小さな切り替えでも十分です。このような成功体験を重ねることで、お子さんは無理なく慣れていきます。
切り替えができたら努力を認める
行動の切り替えができたときは、その努力をしっかり受け止めてあげましょう。「よくできたね」「頑張れたね」といった言葉で、できたことを認めてあげてください。
こうした声かけによって、お子さんの中に「行動を切り替えると良いことがある」という安心感が生まれます。すると「次もやってみよう」という気持ちにつながり、少しずつ前向きになっていきます。
STEP2. 切り替えをスムーズにするトレーニング
簡単な切り替えができるようになったら、次のステップへ進みます。ここでの目標は、より少ない指示でも自分で行動できるようになることです。
予告を少しずつ減らす
お子さんが行動の切り替えに慣れてきたら、段階的に予告の内容を変えていきます。たとえば、次のような方法があります。
① タイマーを使わず、声かけだけにしてみる
② 声かけの回数を減らす(10分前・5分前・3分前 → 5分前だけにするなど)
③ 「もうすぐ終わりだよ」といった少し曖昧な表現に変えてみる
ポイントは、無理をせず少しずつ進めることです。うまくできる日もあれば、うまくいかない日もあるかもしれません。そんなときも、責めたり叱ったりせず、長い目で見守っていきましょう。
なお、1日の流れを書いたホワイトボードはこの段階でもそのまま使い続けてください。予定が見える状態にしておくことで、お子さんが先の見通しを持ちやすくなり、不安の軽減につながります。また、自分で行動する力を育てるうえでも大きな助けになります。
本人が決める割合を増やす
この段階では、お子さん自身に切り替えのタイミングを考えてもらう働きかけも効果的です。自分の意思で決める経験を重ねることで、行動の切り替えを「やらされるもの」ではなく、自分の行動として捉えやすくなります。たとえば、
「あと何分で終わりにする?」
「どこまでやったら宿題に移る?」
といった声かけをしてみましょう。このように、切り替えを前提にした問いかけを取り入れることで、お子さんが自分で決める場面を少しずつ増やしていけます。
難しい切り替え(勉強など)にも挑戦
この段階では少しずつ難しい切り替えにも挑戦していきます。多くのお子さんの場合、最終的な目標のひとつは「勉強への切り替え」になるのではないでしょうか。
ただし、ここでも大切なのは段階的に進めることです。いきなり完璧な切り替えを求めるのではなく、
「まずは机に座る」
「教科書を開く」
といった小さなステップから始めても構いません。「昨日より一歩前に進めた」と感じられれば、それは十分な成長です。
STEP3. 自分で行動を切り替える力を育てる
行動の切り替えがある程度スムーズにできるようになってきたら、最終的には「言われなくても自分でできる状態」を目指していきます。
ただし、小学生・中学生にとって「自分で判断して動く」というのは、決して簡単なことではありません。こうした力が自然に身につくためには、脳の成長もある程度必要になります。ここでは、小中学生にとって現実的なゴールの考え方も含めてご紹介します。
生活の流れをパターン化する
小中学生の段階では、自分で考えて行動することより、生活の流れをルーティン化し、身体で覚えていく方法が現実的です。日々の生活の中で
「この時間になったら宿題」
「ご飯の後はお風呂」
といった行動の流れが自然に身につくと、切り替えもスムーズになっていきます。それだけでも大きな前進です。成長とともに、少しずつ自分で考えて動く力も育っていきます。
毎日の切り替えが「当たり前のこと」として自然にできるようになれば、ひとまず大きな目標は達成できていると言えると思います。
うまくいかないときは原因を一緒に考える
うまくいかなかったときは、お子さんと一緒に原因を考える時間を作ってみましょう。大切なのは、大人の考えを押しつけるのではなく、お子さん自身が気づけるように寄り添うことです。たとえば、
「今日はどうして難しかったかな?」
「次はどうしたらうまくいきそう?」
といった肯定的な問いかけを意識すると、お子さんも安心して考えることができます。自分で原因を見つけられるようになると、自己理解が深まり、「次はうまくできるようにやってみよう」と前向きな気持ちにつながります。
行動の切り替えトレーニングを成功させるコツ
最後に、行動の切り替えトレーニングを続けていくうえで意識しておきたいコツをご紹介します。
スモールステップを意識する
行動の切り替えトレーニングでは、「自分で行動を切り替えられるようにする」という目標をいきなり目指しても、お子さんによっては難しく感じてしまうことがあります。小さなステップを積み重ねながら、「できた」を少しずつ増やしていきましょう。
小さな変化を見逃さない
トレーニングでは、保護者の方がお子さんの変化に気づき、少しでも前進していれば認めてあげる姿勢が欠かせません。お子さんは「見てもらえている」「認めてもらえた」という安心感を持ち、次の努力につなげやすくなります。
お子さんの意見を聞きすぎない
行動の切り替えがまだ習慣になっていない段階では、お子さんの意見を聞きすぎないことも大切です。お子さんはどうしても「楽しいこと」を優先してしまいがちです。そのまま任せてしまうと、トレーニングの目的が曖昧になってしまうことがあります。
保護者の方がある程度方向を示しながら、サポートしてあげてください。
うまくいかない日があっても焦らない
トレーニングでは、順調に進む日もあれば、思うようにいかない日もあります。それでも「またできなくなってしまった」と焦る必要はありません。お子さんのペースを尊重しながら、落ち着いて続けていくことが大切です。
日々の努力を積み重ねていくことにより、行動の切り替えは少しずつ身についていきます。
まとめ|行動の切り替えトレーニングは家庭でもできる
行動の切り替えがうまくできないお子さんに悩んでいる場合は、ご家庭で行う行動の切り替えトレーニングが役立ちます。行動の切り替えトレーニングは、次の3つのステップで進めていきます。
① 行動の切り替えに慣れる
② 切り替えをスムーズにする
③ 自分で切り替えられるようになる
ただし、すべてのお子さんが最後のステップまで完璧に進める必要はありません。大切なのは無理をせず、スモールステップで少しずつ前に進んでいくことです。
小さな変化を見逃さず、「できたね」と認めていくことで、お子さんは少しずつ成功体験を積み重ねていきます。その積み重ねが、自信や意欲につながり、やがて自分で判断して行動する力を育てていくと思います。
行動の切り替えは年齢とともに身についていく面もあります。思うようにいかない日があっても、焦る必要はありません。昨日よりもほんの少し前に進めた―そんな日々を積み重ねながら、お子さんの成長をゆっくり見守っていきましょう。
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