受験という大きな目標に向かって努力する皆さんにとって、試験当日までの準備期間はとても大切な時間です。合格をより確実なものにするためには、単に長時間勉強すればよいというものではなく、効率的な学習法はもちろん、体調や生活習慣、メンタル面のケアまで含めた総合的な対策や準備が必要です。
ここでは、受験までに整えておくとよい「生活習慣」「学習計画」「モチベーション維持」など、いくつかの観点からおすすめの対策や習慣を具体的に解説します。受験生だけでなく、保護者の方や指導者の方にも参考にしていただければ嬉しいです。
1.受験勉強を始める前に大切な心構え
1-1.ゴールを明確にする
「受験で合格したい」という大目標はもちろん大切ですが、さらに具体的なゴール設定が重要です。たとえば「○○大学へ行って学部は○○に入る」「〇〇高校に合格して〇〇部に入る」「偏差値を○○まで上げる」など、具体的な数値や行きたい学校の特徴をイメージすることで、毎日の勉強への意欲が増します。抽象的な目標ではなく、なるべく具体的にゴールを明確にしましょう。
1-2.計画倒れを防ぐために
計画を立てる際、「完璧」なスケジュールを作ろうとすると、実現が難しくなった時に一気にモチベーションが下がる危険があります。全体的なロードマップを把握しつつ、細かい予定は微調整ができるように柔軟性を持たせるのがコツです。
特に受験期は体調不良や学校行事など、想定外の出来事も起こりやすい時期。最初から「計画通りにいかないこともある」と想定しておくと、焦りを最小限に抑えられます。
1-3.学習習慣を作るためのウォーミングアップ
受験勉強に本格的に取り組む前に、まずは数週間「勉強時間を確保する習慣」を試行錯誤してみましょう。たとえば、起床後や寝る前の30分を学習にあてるなど、無理のない時間帯からスタートするのも良いと思います。勉強量は徐々に増やし、いきなり「勉強漬け」の毎日に飛び込まないよう心がけると、長期間の継続がしやすくなります。
2.効率的な学習計画の立て方
2-1.全教科を網羅しつつ優先順位をつける
受験科目が多いほど、一つひとつの科目に割く時間配分が難しくなります。どの教科もまんべんなく学習することは理想ですが、得意科目と不得意科目の優先順位を決めて学習することがポイントです。自分が目指す大学や高校の合格ラインを踏まえて、配点が大きい科目や合否を分けやすい科目は重点的に取り組む必要があります。
2-2.小目標を区切ってモチベーションを維持
1週間、1か月、3か月、半年など、短期・中期・長期の目標を区切りとして設定しましょう。たとえば「1週間後までに英単語を100個覚える」「3か月後までに数学の苦手単元を克服する」といった形です。小さな目標を達成するたびに、「やればできる」という成功体験を積み重ねることが勉強の継続につながります。
2-3.計画に“余白”をつくる
毎日の勉強スケジュールを埋めすぎると、突発的な用事や体調不良で計画が崩れやすくなります。1日の中に30分〜1時間程度の“予備の時間”を組み込み、多少のズレがあっても軌道修正できるようにしておくと、ストレスを感じにくくなります。
3.体調管理と生活リズムを整えるコツ
3-1.勉強時間と休息のメリハリ
多くの受験生が陥りがちなのが「長時間勉強=正義」という思い込みです。もちろん学習量を確保することは大事ですが、休憩を挟まずに続けてしまうと集中力が低下し、結果的に効率が悪くなります。人間の集中力は長くても90分程度が限界とされることが多いです。そのため適度な休憩を入れながら勉強に取り組むことが大切です。
3-2.早寝早起きの習慣づくり
夜型の生活を送っている人は、受験期に向けて少しずつ朝型に切り替えていくのがおすすめです。試験は朝から始まることが多く、当日のパフォーマンスを最大化するためには普段の生活リズムを合わせておく必要があります。夜型から朝型に変わるまでには2〜3週間ほどかかる場合がありますので、試験直前になって焦らないよう、なるべく早めの段階からシフトしていきましょう。
3-3.自分に合った勉強時間帯を見極める
一口に「朝型がいい」と言っても、人によっては深夜の方が集中しやすいという人もいます。大切なのは自分の体質やリズムを把握したうえで、「いちばん頭が冴える時間帯」に重要な科目を持ってくることです。朝型でも夜型でも、学習量は同じくらいこなせるので、自分に合ったスタイルを選ぶようにしましょう。
4.食事・睡眠・運動の重要性
4-1.脳のエネルギー源を意識した食事
脳はブドウ糖を主なエネルギー源としているため、炭水化物をまったく摂らない極端なダイエットなどは集中力低下を招きがちです。また、ビタミンやミネラルも脳機能の維持に重要なので、バランスの良い食事を心がけましょう。偏食や過度なファストフードの摂取は避け、野菜、たんぱく質、炭水化物をバランス良くとることが大切です。
4-2.質の高い睡眠
睡眠は記憶の定着に深く関わっているため、受験勉強において欠かせない要素です。睡眠時間を削ると集中力や記憶力が低下し、学習効率が著しく落ちることが多くの研究で示されています。スマホやパソコンのブルーライトを避ける、就寝前は激しい運動をしないといった基本的な睡眠対策を心がけ、質の高い睡眠を確保しましょう。
4-3.運動の習慣化
軽い運動や散歩などは血行を促進し、脳への酸素供給を高めるため、学習効率を上げてくれます。長時間座りっぱなしで勉強していると疲労が溜まりやすいので、1日30分程度のウォーキングやストレッチなどを取り入れると良いでしょう。毎日の習慣として少しずつでも運動を行うことが大切です。
5.集中力を高める環境づくりと習慣
5-1.勉強部屋の整理整頓
机の上が散らかっていると、無意識に目がいき、集中が途切れやすくなります。勉強に不要なものは机や視界から遠ざけるようにしましょう。特にスマートフォンやゲーム機は誘惑が強いので、勉強時間は別の部屋に置いておくなど工夫が必要です。
5-2.デジタルデトックスの活用
SNSの通知や動画サイトへのアクセスは、知らず知らずのうちに勉強時間を削ってしまいます。休憩中に見ているつもりが、いつのまにか長時間見入ってしまうことは少なくありません。そこで、勉強中はアプリの通知を切る、スマホを機内モードにするなどして、デジタルデトックスを意識しましょう。最初はストレスが溜まるかもしれませんが、慣れてくると勉強の効率と集中力が飛躍的に上がります。
5-3.小さな成功体験の積み重ね
モチベーションを高めるもう一つのコツが、小さな成功体験を重ねることです。たとえば「今日は英単語を10個覚えられた」「1日で参考書の1章を終わらせた」などの小さな達成感を得ると、さらにやる気が湧いてきます。そのためにも、達成可能な目標を設定し、段階的に勉強を進めましょう。
6.モチベーションを保つための考え方と工夫
6-1.自分なりの“ご褒美”を設定する
長期にわたる受験勉強でモチベーションを保ち続けるのは容易ではありません。そこで、「ここまで勉強したら好きなスイーツを食べる」「模試で目標点を達成したら新しい本を買う」など、自分なりのご褒美を設定するのも一つの手です。ご褒美によって気持ちをリセットし、新しい課題に前向きに取り組むきっかけを作りましょう。
6-2.同じ目標を持つ仲間との交流
受験はときに孤独との戦いでもあります。同じ学校を目指すお友達と情報交換や励まし合いをすることで、モチベーションを高く維持しやすくなります。また、勉強法や参考書の情報交換をすることで新たな刺激や発見があったり、自分の学習効率がさらにアップする可能性もあります。
6-3.成果を“見える化”する
点数の推移や学習時間などをグラフ化して“見える化”すると、自分がどれだけ勉強したか、どのくらい伸びているかを客観的に確認できます。スマートフォンの勉強管理アプリや手帳を活用し、学習時間を記録する習慣をつけるといいでしょう。視覚的な変化は思った以上にモチベーション維持に効果的です。
7.過去問の活用方法と合格ラインのイメージづくり
7-1.過去問で出題傾向を把握
志望校の過去問は、出題傾向や難易度を知る上で非常に役立ちます。試験範囲全体を均等に勉強するのも大切ですが、過去問を繰り返し解くことで「あ、この分野がよく出るんだな」「ここを対策しておけば本番でアドバンテージになる」といった具体的な戦略を立てられます。
7-2.合格ラインを具体的に見る
過去問を解いてみて、合格最低点や平均点と比較し、自分が足りていない部分を客観的に把握しましょう。合格ラインを意識することで、どの科目にどれだけ時間を割くべきかがより明確になります。科目ごとの配点を再確認し、優先度の高いところから対策を行いましょう。
7-3.模試の活用
模試は自分の現在地を知る絶好の機会です。過去問と併用しながら受けることで、実戦形式に慣れると同時に、弱点を洗い出すことができます。模試の成績が思わしくなくても悲観せず、結果を分析して次の勉強計画に活かしていきましょう。
8.試験直前期の過ごし方とメンタルケア
8-1.試験直前は“新しいこと”より“復習”重視
試験直前に新しい分野に手を出してしまうと、中途半端に終わってしまう可能性が高いです。これまで学んできた範囲の総復習を行い、知識を確実に固めることに集中しましょう。特に暗記系の科目は、試験直前の反復練習が得点力アップにつながります。
8-2.テスト本番を想定したトレーニング
試験当日は想像以上に緊張するかも知れません。緊張状態に慣れておくためにも、できるだけ本番形式に近い条件で過去問を解く訓練をおすすめします。時間配分や問題を解く順番などをシミュレーションし、当日のトラブルを最小限に抑えられるよう備えましょう。
8-3.不安・プレッシャーへの対処法
「落ちたらどうしよう」「失敗したら恥ずかしい」など、受験の不安やプレッシャーは誰しも感じるものです。大切なのは、不安・プレッシャーを感じたときにどう対処するか。まずは「不安・プレッシャーを感じるのは悪いことではない」と受け止めること。みんな同じ気持ちでいると気づくこと。そして、深呼吸や簡単なストレッチ、あるいは音楽を聴くなど、気分転換の方法をいくつか用意しておきましょう。
9.失敗から学ぶリカバリー術
9-1.点数が伸び悩むときの対処
勉強を続けているのに点数が伸びないと感じる場合、原因はさまざま考えられます。学習方法に問題があるのか、基礎が固まっていないのか、暗記が不十分なのか、原因をしっかり分析しましょう。一度習得したつもりでも、実は定着していないことはよくあります。もう一度基本に立ち返り、参考書や問題集を復習すると改善するケースが多いです。
9-2.模試の結果を活かす
模試の結果が悪いと意気消沈してしまいがちですが、ここからがリカバリーのチャンスです。成績表には、科目別の偏差値や問題別の正答率など、多くの情報が詰まっています。どの分野で間違えたのか、どのレベルの問題でつまずいたのかを具体的に把握し、それに合わせた学習計画の修正を行いましょう。
9-3.ポジティブな捉え方で前進する
失敗を経験したときこそ、精神的に成長するチャンスです。「なぜ間違えたか」「どうすれば同じ失敗を繰り返さないか」を前向きに分析し、次の試験に活かす姿勢が大切。どんな優秀な受験生でも、挫折や失敗を経験しながら合格に近づいています。失敗を糧にして、より強い学習スタイルを確立していきましょう。
さいごに
合格を超えた学びへの一歩
受験はゴールではなく、新しい学びのステージへと進むための通過点です。合格を目指して頑張る過程で身についた勉強習慣や自己管理能力は、高校・大学へ進学してからも大きな武器となります。逆に言えば、受験が終わってもその学習習慣を維持・発展させることで、さらに充実した学びの環境を手に入れることができるのではないでしょうか。
今回ご紹介した「生活習慣を整える」「モチベーション維持」「体調管理」「過去問・模試活用」といったポイントは、どれも受験だけでなくその後の人生にも応用可能です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんが合格を勝ち取り、さらなる高みへと進んでいかれることを心から応援しています。
参考文献
『受験脳のつくり方』(池谷裕二 著、新潮社)
『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治 著、サンマーク出版)
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