「漢字が苦手で、なかなか覚えられない…」
「練習したはずなのに、テストになると書けなくなってしまう…」
そんな悩みを抱えているお子さんは、実は少なくありません。保護者の方も、「もっと練習させたほうがいいのかな」と悩んでしまうことがあるのではないでしょうか。
小学校では2年生以降、毎年160〜200字ほどの漢字を新しく学んでいきます。書き順や「とめ・はね・はらい」まで意識しようとすると、お子さんにとって負担が大きくなりがちです。
実は漢字が身につくかどうかには、努力や能力ではなく、「覚え方の方法」が大きく関わっています。お子さん一人ひとりに、「自分にとって覚えやすい学び方」があるのです。
そこでこの記事では、主に漢字が苦手な小学生とその保護者の方に向けて、楽しく漢字を覚えるための工夫をご紹介します。ものの覚え方の傾向である「認知特性」ごとに、具体的な覚え方をまとめました。
「これなら楽しくできそう」と思える方法を、ぜひお子さんと一緒に見つけてみてください。なお、中学生で漢字が苦手なお子さんにも、同じ考え方を取り入れることができます。
なぜ漢字学習が楽しくなくなってしまうの?
漢字学習が楽しくなくなってしまう背景には、いくつかの共通した理由があるんです。まずはその理由を確認してみます。
ひたすらノートに練習している
習った漢字をノートに何度も書く勉強法は、昔からよく行われてきました。ただ、この方法がすべてのお子さんに合うとは限りません。
漢字は、目で見てイメージしたほうが覚えやすい人もいれば、声に出したり、意味と結びつけたりしたほうが身につきやすい人もいます。自分に合わない方法で、ただ手を動かす作業を続けていると、だんだん興味や関心が薄れてしまいます。
きれいに書くことばかり強制される
せっかく漢字を書けるようになっても、「とめ・はね・はらい」を細かく指摘されたり、何度も書き直しを求められたりすることがあります。
こうした注意が重なると、漢字そのものが嫌いになってしまうことも少なくありません。「漢字って面倒くさい」という気持ちが、先に出てしまうんです。
一度覚えてもすぐ忘れてしまい、自信をなくす
授業で習った直後は覚えていたはずの漢字も、時間が経つと忘れてしまうことがあります。漢字テストを受けてみたら、思ったより書けなかった…という体験が続くと、どうしても自信をなくしてしまいます。
記憶が定着しにくいのは、決して努力不足が原因ではありません。覚え方が合っていないだけの場合も多いのです。
楽しく漢字を覚えるには認知特性に合わせよう
楽しく、そして無理なく漢字を覚えていくために、ぜひ知っておいていただきたいのが「認知特性」です。認知特性とは、ものを覚えたり考えたりするときに使われる、情報処理の「クセ」のようなもの。漢字の学習では、このクセを理解しておくことで、覚えやすさがぐっと変わってきます。
まずは認知特性の種類を知ろう
認知特性は、大きく分けると3つのタイプがあります。それぞれに得意な学び方がありますが、どれが良い・悪いというものではありません。お子さんに合ったタイプを探してみましょう。
視覚優位タイプ
視覚優位タイプは、目から入る情報を手がかりに、物事を理解・記憶するのが得意な特性です。言葉だけで説明するよりも、図やイラスト、色分け、ジェスチャーなどを使ったほうが、スムーズに伝わることがあります。
このタイプのお子さんは、普段から物事を写真や映像のようにイメージして捉えることが多いんですね。
聴覚優位タイプ
聴覚優位タイプは、声や音、歌やリズムなど、耳から入る情報を通して理解・記憶を深めるのが得意です。声に出して説明したり、繰り返し聞かせたりすると、内容が頭に残りやすい傾向があります。
一方で、音に敏感な面もあるため、周囲が騒がしい環境では集中しづらいこともあります。勉強では、できるだけ落ち着いた環境を整えると安心です。
言語優位タイプ
言語優位タイプは、「話す」「聞く」「読む」「書く」といった言葉を使った活動を通し、物事を理解・記憶するのが得意な特性です。理由や流れを筋道立てて説明すると、理解が深まりやすくなります。
この特性は成長とともに身についてくることも多く、小学校高学年や中学生に比較的多く見られます。
認知特性に合う方法で学びつつ、「楽しさ」も大切に
認知特性は、漢字学習に限らず、勉強全般や物事への取り組み方に大きく影響します。特性に合った方法で学ぶことで、「わかる」「できる」という成功体験につながりやすくなります。
ただし、早い段階で特性を決めつけすぎないことも大切です。お子さんは日々成長していますし、環境や経験によって学び方が変わることもあります。
いろいろな方法を試しながら、「これなら楽しく続けられそう」と感じるものを選んでみてください。
楽しく漢字を覚える方法①〜視覚優位タイプ〜
視覚優位のお子さんには、目で見て理解できる工夫が向いています。教材は手作りすることもできますが、無理をする必要はありません。ご家庭での負担が大きい場合は、市販の本やアプリなどを上手に取り入れるのも一つの方法です。
漢字の形と意味を視覚的に結びつける
漢字の中には、物の形をもとに作られたものがあります。小学校低学年のうちは、こうした漢字を多く学ぶため、イラストを使ったり、簡単な絵を描いたりしながら覚えると効果的です。
たとえば「山」や「川」といった象形文字は、少し絵を添えるだけでも、成り立ちから理解しやすくなります。また、「明」や「岩」などの会意文字は、少し難しく感じるかもしれませんが、「お日さまと月」「山にある石」といったイメージを視覚的に表せると、ぐっとわかりやすくなります。
パーツに分解し、語呂合わせの絵で覚える
漢字をいくつかのパーツに分け、語呂合わせと一緒に覚える方法もあります。このとき、文字だけでなく、絵で視覚的に表すことがポイントです。たとえば、
・公→「ハ」と「ム」に分けて、「公園に」「ハム」が置いてある絵
・今→「∧(屋根)」と「ラ」に分けて、「屋根の下」で「ラララ〜」と歌う絵
といったように、パーツを組み合わせたストーリーを作り、それを簡単なイラストで表して覚えます。絵を見るだけで漢字が思い浮かぶため、楽しみながら覚えられます。
(出典:『小学生おもしろ学習シリーズ まんがとゴロで 楽しく覚えて忘れない 小学漢字 1026』西東社,2022)
書く前に動画やアプリで書き順をチェック
視覚優位のお子さんは、見ることで理解が深まりやすいため、書き順や「とめ・はね・はらい」も自然と身につきやすい傾向があります。動画やアプリを活用し、実際に書く前に動きを確認しておくとよいでしょう。その際、
「ここは横の線から書いているね」
といった声かけをしてあげると、ポイントに意識が向きやすくなります。
楽しく漢字を覚える方法②〜聴覚優位タイプ〜
聴覚優位のお子さんは、漢字を覚えるときも、「聞く」「話す」を意識した学習にすることで、頭に入りやすくなります。市販教材を上手に使い進めていきましょう。
ただし、声を出す学習が苦手なお子さんには合わない場合もあります。お子さんの様子を見ながら、合いそうかどうかを判断してあげてください。
漢字を分解した語呂合わせを、声に出して覚える
ここでも、語呂合わせが力を発揮します。漢字をいくつかのパーツに分け、それを言葉にして覚える方法です。たとえば、
・公 →「公園にハム」
・今 →「今、屋根(∧)の下でラララ〜と歌っている」
といった語呂を、何度もつぶやきながら字を書いてみます。音と手の動きが結びつくことで、漢字がすっと頭に入りやすくなります。
お父さん・お母さんと一緒に「語呂づくり遊び」をしてみるのも、楽しい時間になるかも知れません。
(出典・引用:『小学生おもしろ学習シリーズ まんがとゴロで 楽しく覚えて忘れない 小学漢字 1026』西東社,2022)
例文を声に出し、読み方のバリエーションも身につける
読み方が複数ある漢字でも、例文を活用すると覚えやすくなります。さまざまな読み方を含んだ例文を作り、それを声に出して繰り返すことで、複数の情報を同時に覚えられます。
たとえば下記市販教材には、次のような例文が掲載されています。
・「空」→ 空(あ)き地の空(そら)にむかってうったつもりが、空(くう)気をうって空(から)ぶり!
この例文なら、「空」という漢字の読み方を一度に確認できます。ある程度読み方を覚えたら、例文をつぶやきながら書いてみましょう。音と漢字が結びつき、記憶に残りやすくなります。
(出典・引用:『斎藤孝の声に出して書いておぼえるかん字ドリル』齋藤孝. 幻冬舎,2020)
書き順を声に出しながら書く
書き順も、声に出しながら書くことで覚えやすくなります。「よこ、たて、よこ…」など、間違えやすい部分を言葉にしてみましょう。たとえば「右」や「左」の場合、
・「右」→ たて、よこ、口(ろ)
・「左」→ よこ、たて、工(え)
と声に出しながら書くと、形を正しく覚えやすくなります。後半の「口」や「工」の部分を、あえてカタカナの「ろ」「え」に見立てると、低学年のお子さんでもイメージしやすくなります。
楽しく漢字を覚える方法③〜言語優位タイプ
言語優位タイプのお子さんは、漢字を「説明しながら覚える」ことで、ぐっと記憶に残りやすくなります。 一度「説明して覚える」習慣が身につくと、英単語や社会の用語など、ほかの暗記学習にも応用しやすくなります。
【高学年向け】部首ごとに意味のまとまりで覚える
覚える漢字が増えたときにおすすめなのが、同じ部首をもつ漢字をまとめて覚える方法です。たとえば「さんずい」のつく漢字は、「水」に関係するものが多いですよね。
「海」「波」「港」「湖」「河」「洋」なども、すべて水が流れている様子や、水辺のイメージと結びつけることができます。
共通したイメージでグループ化することで、意味のあるまとまりとして記憶に残りやすくなるため、楽しく漢字を覚えることにつながります。
意味が少し分かりづらい漢字については、同じ部首の漢字をいくつか並べて、「ここに並んでいる漢字、何か共通点がありそうだと思わない?」と、保護者の方から問いかけてみるのも効果的ではないでしょうか。
【高学年向け】自分なりにノート作りをしてまとめる
漢字学習では、自分専用のオリジナルノートを作ってみるのもおすすめです。自分で考えた例文を書いてみたり、成り立ちや気づいたことなどを自由にメモしていきます。
「書く」という作業を通して、頭の中が整理され、自分なりの理解が少しずつ深まっていくはずです。記憶を定着させるためには、頭の中にトリガー(思い出すきっかけ)をたくさん作ることが大切です。オリジナルノート作りは、多くのトリガーが生まれる学習法なんです。
親に説明しながら漢字を書く
保護者の方に漢字を説明しながら書く方法も、とても効果的です。 低学年のお子さんでも取り組めます。たとえば「森」という漢字なら、
「木がたくさん集まっているから、3つも書くんだよ」
「一番上を少し大きく書くと、奥まで続く深い森みたいに見えるでしょ」
といったように、習ったことを自分の言葉で説明していきます。
人に説明するには、頭の中を整理し直す必要があります。その過程で、学んだことを何度も思い出すことになるため、自然と知識が定着していくんです。
うまく説明できたときには、「分かりやすいね」と声をかけてあげてください。
楽しく漢字を覚えるためのコツ
最後に、楽しく漢字を覚えるためのコツをお伝えします。大切なのは、学校での評価と家庭学習を少し切り分けて考えることです。家庭では、無理なく取り組めて、「楽しい」と感じられることを優先していきましょう。
「読めること」「意味がわかること」から始める
まずは、書かれている漢字が読めて、意味が分かる状態を目指します。「読めた」事実をしっかり認めてあげることで、学習へのハードルはぐっと下がります。漢字に対する苦手意識を持たせないことが、楽しく漢字を覚えるための第一歩です。
この段階までできると、お子さんの中に「できた!」という小さな成功体験が生まれます。書き順や「とめ・はね・はらい」については、段階的に身につけられれば大丈夫です。
まずは代表的な読みのみ意識して自信をつける
「読める」と言っても、最初の段階では代表的な読みが分かっていれば十分です。新しく習う漢字は数が多いため、最初から複数の読み方まで完璧にしようとすると、負担が大きくなってしまいます。
まずは全体を通して「覚えられた」「できた」という感覚を持つことを大切にしましょう。
まとめ|まずは漢字を好きになることから始めよう
「漢字を覚えられない…」
「覚えても、すぐに忘れてしまう…」
そんな悩みの背景には、お子さんの特性に合わない方法で勉強していることが隠れている可能性があります。漢字が苦手なのではなく、やり方が合っていないだけ、というケースはとても多いんです。
視覚・聴覚・言語など、それぞれの認知特性に合わせた方法で取り組むことで、漢字はぐっと覚えやすくなります。「できた」という経験が増えると、自然と前向きな気持ちも育っていきます。
家庭での学習では、まず「楽しさ」を大切にしてみてください。一つの方法にこだわらず、いろいろ試しながら、お子さんに合うやり方を一緒に見つけていけるといいですね。
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