ドイツの大学受験制度とは?
ドイツの受験制度の概要
まずドイツの教育は、日本と異なる「複線方式」をとっています。
10歳までの基礎学校を終えると、大学受験をめざすコース、
特定の職能に特化したマイスターを養成するコース、その中間のコース、
の大きく3つのコースのいずれかを選択します。
大学受験をめざす「ギムナジウム」(日本の小学5年生~高校3年生に相当)では、
受験のための一貫教育が行われます。
各学年末の評定で一定の水準に達していないと「落第」して留年することもある厳しいものです。
原則として2回続けての留年はできないので、その場合他の学校種へうつることになります。
ギムナジウムの卒業試験としてアビトゥーア(Abitur)というものがあり、
合格すればドイツ国内のどの大学、学部へも入学することができるという制度で、
これがすなわち受験の代わりということになります。
ただ、医学、薬学、歯学、心理学、生物学、獣医学、建築学、経営学などは、
希望者数によって入学制限が生じる学部があり、この場合はアビトゥーアの成績順での入学となります。
アビトゥーア試験の詳細と日本との比較
アビトゥーア試験の内容について詳しく説明します。
まず、これは日本のセンター試験のような1度きりの筆記試験ではなく、
ギムナジウムの最後の2年間の成績も平常点として加味されます。また試験内容も、
質疑応答を含むプレゼンテーションがあり、
筆記試験は選択式ではなく論文方式で高いレベルの知識と思考能力を問うものなので相応の準備が必要です。
不合格となった場合、翌年もう一度受けることができますが、それ以降は受けることができません。
ドイツでも日本同様、大学入学者が増加することによる学生の質の低下が懸念されていますが、
アビトゥーアという共通の入試制度によって一定の水準が保証されていることは一つの信頼につながっています。
日本では近年、安易なAO入試の拡大等で学力が不足した学生の入学、
また従来型の知識偏重型入試の見直しなどが課題となっていますが、
ドイツに学ぶことができる部分も大きいかもしれません。
またドイツでは高度な技能を持ったマイスター(職人)も非常に社会的地位が高く、
その点でも日本と異なります。
大学受験偏重の日本のあり方を見直すヒントがあるかもしれません。